豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. ヘッジファンドも遂に公的救済?
Page641

ヘッジファンドも遂に公的救済?

2009年2月9日

昨年10月17日、本欄に"ヘッジファンドは救済されず"と書いたけれど、どうやら(条件付きながらも)ヘッジファンドがFRBから借り入れできる道が開けそうだ。元々、民間銀行から巨額の融資を受け、レバレッジを効かせて高パフォーマンスをあげてきたヘッジファンドだが、今や、民間銀行団は揃って手を引いてしまった。

"ヘッジファンドなど、所詮、投機集団。彼らを救済する必要などない"という雰囲気が満ち溢れていたのだが、ここにきて、急に風向きが変わった。自動車ローンを担保にした債券を、ヘッジファンドが相当量を買い持っていることが注目され、この部分に限定してヘッジファンドにFRBが資金を入れれば、最終的に庶民が自動車ローンを組みやすくなり、果てはデトロイトの自動車産業をサポートする一助になるのではないか、という議論が出てきたのである。しかし、ある債券は買い取り対象になり、別の債券は対象にならず ということでは公平性を欠くという考えも根強く残る。ただ、いずれにせよ、クレジットカードでも奨学金ローンでも自動車ローンでも、金融システムの中で誰かが貸し倒れリスクを引き受けないと機能しないわけで、そこでヘッジファンドのリスクテークが社会的貢献になるなら、悪い話ではなかろう。

もう一つの話題は、公的資金を受けた米大手金融機関トップの高給が問題になっているのだが、その一覧表がFTに出ていた。

  公的資金投入額 不良資産処分額 CEO年俸
シティー 4.5兆円 8兆円 5000万円
バンカメ 4兆円 3.6兆円 20億円
AIG 3.6兆円 5.4兆円 12億円
JPモルガン 2.2兆円 2.5兆円 25億円
ウエルスファーゴ 2.2兆円 2.5兆円 11億円

いやはや、これではオバマが食ってかかるのも無理ないわな。"有能な人材を確保して金融市場を堅固にする"という大義名分も虚しく響く。

マーケットの方は、金曜日の雇用統計で悪い数字が出たことで一時的にあく抜けした感じだね。とはいえ、NY株の上げも所詮はショートカバーラリー。金融株などを先売りしていた投機筋の買い戻しが主因ゆえ、これも"虚しい"上げである。

金は目先、"欧米のETF買い 対 新興国のリサイクル売り戻し"の構図が続いているが、いかんせん絶対的資金量のケタが違う。金ETFに本格的に株式、債券市場の機関投資家マネーが流入し始めたことは間違いない。とにかく1日で10トンの単位で急増を続けている。この商品は本当に"大化け"したね。カルパース参入の可能性はますます強まったと見る。保守的、横並びの年金業界が、主流が動くと他社が一斉に追随してなびくことは日本も米国も同じだ。

2009年