2009年11月18日
最近マーケットを見ていて感じることだが、NY株のSP500とNY金価格が同じような数字で日々動いている。900、そして1000突破、さらにほぼ同時に1100突入。SP500は、今年3月からすでに6割以上の反騰。金は史上最高値。高値圏で、どうも居心地が悪い、という共通点もある。
投資のトレンドから見れば、株を買うけど、まだ心配だから金も買っておくという投資家心理の表れであろう。いわゆるリスク分散の本当の意味を サブプライムで思い知ったということか。健全な学習効果だと思う。サブプライム前は、株が良ければ金は売り、金が良ければ株は売り、という二者択一であった。株か金かの時代から、株も金もの時代への移行である。株式アナリストが、金にはガンガンの強気だったりすることも今や珍しくない。
さて、オバマ訪中。人民元引き上げについては進展なし。人民元相場は、2005年7月から2008年6月までに対ドルで20%近い上昇が容認された。しかし、その後、世界同時不況の中でディカプリング説も崩れ、輸出死守で人民の雇用を守るという党の強い意志決定で、人民元はドルに再ペッグされてきた。しかし、過剰流動性による国内バブルの懸念が強まると、人民元高が容認されるような環境になってきた。そこで、今後一年に3.4%くらいは人民元高になるのでは、という観測が浮上していたわけだ。
しかし、人民元は政治管理通貨である。マーケットより党の意向が強く反映される。党は、人民元引き上げを再容認することで輸出が減り人民の雇用も減り社会不安が増すことを最も嫌う。しかも、人民元高容認という政策そのものが新たな通貨投機を生むという事情も見逃せない。
管理された通貨が当局の政策で切り上げられるという時、投機筋は先高を見込み、当該通貨を急速に買い増す。その際に、当局が段階的に切り上げる(クローリングペッグ方式)を採ると、投機筋には最も儲けやすい環境になる。引き上げられる度に、もっと引き上げられるという先高感が加速してゆくからだ。だから、管理通貨を引き上げる時に、投機売りを最小限に食い止める方策は、一気に引き上げてしまうこと。でも、それでは輸出産業へのショックが計りしれない。とても党が容認できるところではない。
結局、党としては、人民元高のアドバルーンをオバマ熱烈歓迎の外交的意味を込めて流したわけだが、あくまでリップサービスに過ぎない。
最後に、昨晩のPPI=米国生産者物価コアの下落ぶりを見るに、米国も日本と同じくデフレ基調は鮮明。でも、金価格は今朝すでに1140ドル突破で最高値更新中。プラチナにも波及してきた。そこで、デフレでなぜ金が上がるの、という素朴な疑問も。
金市場は先読みする。デフレが進行してデフレスパイラルに陥れば、またぞろ破たんが相次ぎ、信用リスクが顕在化するは必至。そこまで読めば、破たんしない実物資産も必要ということになる。
それに対デフレ政策、つまりデフレを閉じ込めるために、各国政府は未曾有のインフレ政策=超低金利政策と超大型財政赤字政策を続行中。インフレ政策は、バルブの緩め方が難しい。緩め過ぎるとデフレが一転インフレになるという展開を歴史は繰り返してきた。
要は、デフレ進行期こそ金の買い時。インフレ後期こそ、金の売り時なのだよ。これが今日、一番言いたかったこと。
ところで皆さん、モーリシャスという国知っている?地図で見るとマダガスカルの右のほうにある島国の小国。そこの中央銀行が、例のIMF売却金403トンのなかから2トンを買ったと、IMFが発表。はっきりいって、どうでもいいような数字だけど、スリランカとかモーリシャスとかインドに追随して公的金購入増やしている国が増えているというアナウンスメント効果はあるね。
さて、金市場が注目する四半期ごとの最新金需給統計が、明日19日(ロンドン時間)に発表になる。今回は2009年7-9月期。これまでいろいろ推測で言われてきたことが、統計データで実証、あるいはひっくり返されることもありうる。連日史上最高値更新の時期だけに、いつもより注目度がひと際高い。