豊島逸夫の手帖

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オバマ金融安定化法案と大型財政支援決定前夜

2009年2月10日

いよいよオバマ政権が示す米国経済回復策への期待感が高まる中で、マーケットは、すでに次の心配事を懸念している。

今朝の日経一面記事。"ロシア 民間債務繰り延べ要請へ"(関連記事 国際面 欧州銀に打撃も)
本欄読者にとっては、案の定という感じであろう。本欄1月9日付け "プーチンの焦り"、さらに1月22日付け"ソブリンリスク"などで詳述してきたことの繰り返しになるが、ロシア及びその周辺国が次の火種をなる可能性が出てきた。今日は、この問題を、それらの国々の国債格付けと通貨下落率の一覧で見てみよう。

  格付け 通貨下落率(過去3か月)
ロシア BBB -26%
チェコ A+ -14%
ポーランド A- ―22%
ハンガリー BBB -11%
ルーマニア BB+ -15%
ウクライナ B+ -22%
ベラルウス B+ -24%
カザフスタン BBB -20%

ハンガリーなどはIMFの救済を受けたにも関らず、2009年の経済成長率マイナス2.9%と予測される。ルーマニアは2008年に7.6%の高経済成長を記録したが、ご多分にもれず10月以降に急ブレーキ。産油国カザフスタンは先週20%もの通貨切り下げ。まともな経済状態はチェコくらいのものか。

そして日経一面のもう一つの記事。"長期金利 欧米で上昇。 市場 国債増発を懸念"
これは昨年12月4日付け"FRBのヘッジファンド化 初心者篇"とか、同12月10日"米国債バブルのリスク"以来、いろいろ書いてきた問題だが、先週、電車の中吊り広告を見たら、週刊大衆にまで、この問題についての見出しが載っていたので当方は急に書く気が萎えた。

とはいえ、ここにきて、米国債入札状況を見ても、なりふり構わぬという様相を呈するという感じである。15年ぶりに7年物国債を復活させ、しかも、その入札を毎月実施するという頻度。このままゆくと、3年もの、5年もの、10年もの、30年ものなど、各種米国債が全て毎月入札により売りに出されるという、債券市場にとっては異例の事態となる。これほどの大量発行に買い手がつくはずもなく、それを見越して、すでに債券市場では売りが出ている。昨晩の10年物米国債の利回りは再び3%台に戻るまで売り込まれた。NY株式市場はオバマ大型財政出動を期待しているわけだが、NY債券市場は、その後遺症を心配しているわけだ。

金価格は、ドル金利上昇の兆しを嫌気して900ドルを割り込む急落。オバマ経済政策への期待感が強まれば、金は売られる(質への逃避マネーの流入は減少する)という読みもある。各市場とも、異なる思惑が入り乱れる展開だ。

最後に、商品面に"ダイヤモンド卸売価格急落"の記事。
今、御徒町を歩くと、宝飾業界の苦境を肌で感じる。ダイヤモンド取引も国際間では信用不安の煽りで輸出入決済の見込みがつかず、事実上停止状態に近いという。以前は御徒町のインド系ダイヤモンド ディーラーが日本向け販売で凌ぎを削っていたが、今や国内からリサイクル(還流)してくるダイヤモンドを中国など海外に売り繋ぐ商売に凌ぎを削っている。金もダイヤも"リサイクル"という点では似たような動きをするものだね。

2009年