豊島逸夫の手帖

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外国人投資家に響く日経平均15000円

2014年6月3日

本欄では一貫して外国人投資家の日本株再参入近しの論調を張ってきた。
3月31日付け日経コラム「日本株再参入の機会うかがう海外勢の本音」では「(グローバル)マーケットは次の一手を模索している。そのメニューの上のほうに日本株があることを実感している」と結んだ。
4月11日付け日経コラム「世界のマネー変調、日本株には福となるか」では、「ギリシャ国債や新興国株を買う投資家たちは、日本株のリスクに対するリスク耐性も強い」として、「世界的なマネー変調は、日本株にとって、災い転じて福となす、ことになる可能性をも秘めている」と述べた。
4月21日付け「アベノミクス再評価を試みる欧米マネー」では「国内は総悲観に近いが、欧米では、アベノミクス・日本株再評価論が逆に目立ち始めたこと」を例示して説いた。「国内に流れる外国人マネーの日本株買い終焉などというニュアンスは感じられず、内外の温度差を感じざるをえない」と書いた。
そして、sell in Mayを乗り越え、6月相場入り。日経平均が15000円の大台を試す段階になったところで、俄かに欧米市場での日本株に対する注目度が高まってきた。

米国株は最高値更新で高値警戒感が強い。本格的な調整売りの洗礼を経ずにここまで来たからだ。SP500のボラティリティーを示すVIX指数は11台と史上最安値水準。市場内部に、更にここから買い上げるエネルギーが希薄であることを示唆する。
欧州に流れていたマネーも、そろそろ居心地の悪さを感じ始めた。スペイン10年債利回りは2.85%、イタリア10年債は2.97%と3%以下まで買い進まれた。いっぽう、米国10年債は2.53%。
国力の差を考えれば、スペイン・イタリア国債と米国債利回りスプレッドは明らかに異常に縮小している。

そこで不安感を感じるマネーは「循環物色」を開始。
一部はロシア株に流れた。2月に13%下落したが、5月には10%反騰している。MSCI新興国株指数に対して6割近くもディスカウントになった時点で、割安感からの買いが入った。
とはいえ、あくまでマネーのパーキング現象だ。長居する気はない。
そこで、徘徊するマネーにとって、日経平均15000円水準に回復しつつある日本株が「次に草鞋を脱ぐ宿」の一つとして浮上しつつある。
NYのヘッジファンドマネージャーたちとの会話で、最近よく使われる単語が「path of least resistance」.抵抗感が最も少ない道を選択するという意味だ。世界のどこの市場も経済が構造問題をかかえ分析すれば「抵抗感」を感じる。そこで、「弱さ比べ」の「相対評価」により、アロケーション(資産配分)を決めざるを得ない。リスク・ウエイトの低い順におカネを入れてゆくわけだ。

この発想で比較すると、日本株は、アベノミクス・リスクがつきまとうものの、法人税減税期待などポジティブなポイントも稟議書に書き込める。更に、アベノミクス相場の第一ラウンドにはなかったGPIFとNISAというリアルマネーの参入を連想させる具体的材料もある。
世界の他の市場でこれだけ具体性のある材料を見つけることは容易ではない。

こんなエピソードもある。
先週、NYから「維新の会、分党」についての問い合わせが2件ほど続いたのだ。「党をdivide=割るとはどういうことか?」との質問。そこまで細かくフォローしていることに「本気度」を垣間見た思いであった。
これまでより、明らかに切迫感が強まっている。
なお、このような情報交換が、ヘッジファンドの「ウオートン人脈」という横のつながりで頻繁に交わされる。筆者も、短い期間ではあったが、MPT(モダン・ポートフォリオ理論)と計量経済学を、ペンシルバニア大学のウオートン・ビジネス・スクールで学んだ。

ちなみに、最近、ファンド調査会社がヘッジファンドなど資産運用部門に勤めているファンドマネージャーやアナリストの出身校を調べたところ、35000人の対象者(平均年齢47歳)のなかでペンシルバニア大卒が1101人で一位となっていた。(二位がハーバードで920人)。
「生き馬の目を抜く」といわれるウォール街だが、意外に横並び意識が強い面もあるのだ。
日本株への傾斜も、いったん始まると、拡散のスピードは早い。
対して金価格は1250ドルを割り込み、下値模索。
但し、為替が円安気味に振れているので、円建て金価格の下げは限定的だ。

さて、昨日は尾河眞樹シティーバンク・シニア為替アナリストの新刊「為替がわかればビジネスが変わる」(日経BP社)の出版記念パーティーに参加してきました。女性、男性、若者、シニア、為替業界でお馴染みの色々な面子が集まり、盛会でした。久し振りに会う人や、初対面の人など、私も楽しみましたよ。
なんせ、家族ぐるみの付き合いで、お母さんやお姉さん夫婦も来ていたので、私のほうはもっぱらプライベートな話で盛り上がり。「本を売ってる場合ではない。自分を売れ。誰かいいオトコはいないか」(笑)早いとこ、良き相手を見つけねば。私も常々心掛けているのだけど、なんせ、落ち着き払った感じなので、男子のほうが引いてしまうのだよね。ほんとは、とてもカワイイ面もあるのだけど。家族メールなんて、細かに動く絵文字だらけだし。私のムックで為替対談やったときも、普段は黒のスーツが多いので、わざわざベージュのスーツを指定して写真撮って、これをお見合い写真に使おうといったのだけど。なんと、その写真が今回の新刊の表紙写真になってしまった(笑)。

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そもそも彼女がメディア・デビューするときに、色々「市中引き回し」役やったので、すっかり売れっ子為替アナリストになって、嬉しいよ。皆に好かれるから、昨晩も大勢の人が来てくれました。

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そういえば、私のムックの出版サイン会にも来てもらって、壇上でトークしたとき、目先の円相場を語り、私が円高派、彼女が円安派になって話したのだけど、結果は目先円高に振れて、円安に振れて、引き分けでした。中長期円安は二人とも同意です。編集の人が言っていたけど、二人の対談は、そのまま原稿になるので、編集が楽だと。たしかに、彼女の為替の説明は分かりやすい。

2014年