豊島逸夫の手帖

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日銀に屈したヘッジファンド

2014年11月14日

大手ヘッジファンドのローンスター・キャピタルマネジメントが遂に閉鎖に追い込まれたと、ウオール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。
パフォーマンスが悪化するなかで、閉鎖へ最後の印籠を渡したイベントが、10月31日の日銀サプライズ緩和であったという。
米国量的緩和終了を前提にポートフォリオを組んでいたのだが、日銀サプライズ緩和で「ちゃぶ台返し」を食ったことが「命取り」になったようだ。
本欄でも繰り返し「2014年ヘッジファンドの苦境」について書いてきた。
特に、米国最大の年金基金カルパースがオールタナティブ(代替投資)セクターの中のヘッジファンド投資から撤退の動きは、横並び意識の強い米年金業界に、大きな波紋を投げかけた。
既に、2014年初に、テーパリングの年は米国債利回りも3%から4%へ上昇と見込み、米国債ショート(売り)のポジションを大きく張ったことが、躓きの始まり。
ドル金利は上昇するどころか、10年債利回りベースで2%台の前半へ落ち込み低迷している。
結果、米国債売りで大きな損失をこうむった。

更に、ウクライナ・イラクと想定外の地政学的リスクがシナリオを狂わせた。しかも、中東不安にもかかわらず、原油価格が下落したことも計算外の大きな要因となった。
そして、米国利上げについて、ざまざまな観測が乱れ飛び、早期利上げと利上げ先送りの間に相場は揺れた。市場は、そのたびに短期的リスクオンとリスクオフを繰り返した。
その市場波乱に乗れたファンドと、乗れなかったファンドのパフォーマンス格差は拡大していった。
パフォーマンス悪化と高い運用フィーに、顧客の解約も相次いだ。
先週筆者がNYでヘッジファンド向けに講演したときにも、「日本株」短期売買での逆転ホームラン狙いと思われる参加者が見られた。
しかし、日銀資金供給量の急増がFRB量的緩和終了による世界的流動性引き揚げを埋め合わせる展開は、運用のベースシナリオには想定されていなかったイベントだったのだ。そこで、逆にダメ押しのホームランを食ったファンドもあったことが、今回の一件で露見した。

足元では、「日本、解散総選挙、消費増税先送り」報道について、NYのヘッジファンドは今後の展開を読み切れない。従って、当面、日本株に関しては、様子見の姿勢だ。円売りポジションも、そろそろクリスマスが視野に入り、巨額に積み上がった投機的円売りポジションの「出口戦略」リスクが意識され始めた。
「ローンスター破たんは、未だ、序の口(beginning)。」
今週初めにNYのバーで飲んだ某ヘッジファンドのマネージャーが、今朝のメールでつぶやいた言葉だ。

さて、貴金属関連では、プラチナが1200ドル割れ。
これは円建てで買いだと思います。
単純に「安すぎる」と思うだけ。
私の「勘ばたらき」ですけど。

今日の写真は、夕べ事務所から見た見事な夕方の景色。

2000a.jpg冬が近づき空気が澄んでくると、遠景に富士山が見えるようになります。富士山見ると、癒されるね。やっぱり日本人なのだ(笑)。
昨日、仕事会食でマガーリに行ったら、マダムが「NYからお帰りなさい。」あれ、どうして知ってるの?「昨日見えたお客さんから聞きました」だと。

2014年