2014年9月3日
円安ピッチが加速中だ。ドルは買われやすく、円とユーロはともに売られやすい地合いだ。
量的緩和終了直前のドルが買われ、量的緩和真っ只中の円と、量的緩和考慮中のユーロが売られ、総合的なドルインデックスがここにきて急騰している。
NY市場では、9月のFOMCではイエレン議長が、これまでより強いトーンで利上げを示唆するのではないか、との観測が強まっている。具体的には、量的緩和終了から利上げ開始時期まで「かなりの長期間」という表現がFOMC声明文から抜ける。あるいは、労働力の「たるみ」の度合いを示す形容詞・副詞が、かなり弱まる表現となる、などが考えられる変化だ。
更に、4日のECB(欧州中央銀行)理事会でのドラギ総裁も注目される。物価上昇率が異常に低く、日本型デフレ・リスクが顕在化している欧州経済への対処療法として、「財政政策も更に柔軟に運営するならば、金融政策も、もっとやる用意がある」とジャクソンホールでは語った。これまで均衡財政を唱えていたECBの「転換」であり、ドラギ総裁の欧州経済への危機意識を映す変化として注目された。そのうえで、今回のECB理事会後の記者会見で、「バズーカ砲」と呼ばれる本格的量的緩和に言及するのか、あるいは、「ドラギ・マジック」といわれるリップサービス(口先介入)を続けるのか。ジャクソンホール以来、マーケットではドラギ氏がイエレン氏から主役の座を奪ったかの如き印象が強い。
そして、日銀に関しては、停滞の兆しが垣間見える日本経済に対して、金融政策決定会合で追加緩和措置が考慮されるのか。特に、海外勢には、消費増税後の落ち込みを懸念して、当局の政策対応を期待する見方が増えている。
この中央銀行主導の外為市場を日米欧のマラソンにたとえれば、米ドルが先行。かなりの差で二位の座を円とユーロが競っている。先週は、ユーロ売りが顕著であったが、米国レーバーデー三連休明けの市場では円売りの勢いが優った。筆者流の外為不等式では、足元でドル>ユーロ>円となっている。しかし、ユーロと円は抜きつ抜かれつの様相だ。
このドル高、ユーロ・円安のモメンタム(勢い)に死角はないのか。
そこで想起されるのが、2013年9月16,17日に開催されたFOMCでの「ちゃぶ台返し」だ。当時のバーナンキFRB議長が、量的緩和縮小へ言及確実と見られていたが、蓋をあけてみれば、テーパリングは見送り。意表を突かれたファンド筋はストップロス円買い戻しに走り、円相場は99円台から一気に97円台にまで急落した。
市場関係者の大半が同方向を向くと、相場は逆に動きやすい。当時、筆者は現地でのディーラーたちと会話から、その可能性を感じ、2日間の会議の初日が終わったところで「FOMC初日、緩和縮小延期の可能性浮上」との原稿を日経コラムに送った(日本時間9月18日付け)。
そして一年後。
今年も9月16、17日に開催されるFOMCを前に、外為市場では市場関係者の大半が円安・ドル高を見込む。ただし、その主たる根拠は、昨年の量的緩和縮小から、今年は利上げにシフトしている。
そのなかで、今年も筆者はFOMCにかけてNYへ出張するが、なにやら既視感に似た思いを感じざるを得ない。
円安の方向性に異論はないが、そのピッチが速すぎることを懸念しているのだ。
もし、今回のFOMCで、イエレン氏が、やはり生粋のハト派ぶりを披露するようなトーンをにじませると、投機的円売り・ドル買いポジションは一気にひっくりかえされるリスクをはらむ。
前回のFOMC議事要旨では、タカ派の数はsome(数名)と事前予測より多目に表現され、イエレン氏のジャクソンホールでの講演にも、タカ派への配慮が垣間見えた。超ハト派とされた同氏が、若干なりとも歩み寄りの姿勢をにじませたことで、結果的に、「ハト派」から「中立」へのシフトと解釈された。その流れの中でのドル全面高ゆえ、FOMC声明文に冒頭にあげたような変化が見られなければ、市場にはいったんドル買い円売りポジションを手じまう動きが噴き出す可能性があるのだ。ヘッジファンドの間には、昨年の記憶も生々しく残るので、ドル買いポジションだが、プット・オプションでヘッジも怠らぬ向きも見受けられる。
そして、5日には米雇用統計が発表され、今回のFOMCに重要な影響を与える可能性がある。しかし、イエレン氏が重視する労働参加率、長期失業者、非自発的パートタイマー数などの「雇用の質」は構造的問題ゆえ、月々の振れが限定的だ。バーナンキ時代に比し、労働市場での「たるみ」をいかに解釈するか、との議論のほうが重視される傾向がある。そこで筆者が注目している存在が、大物FRB副議長の存在だ。ドラギの恩師でもあるフィッシャー氏のことだが、ジャクソンホール直前にはストックホルムで、米国経済に関し極めて厳しい見解を披歴し、ハト派スタンスを露わにした。イエレン氏へのエールとさえ感じられたものだ。
なお、雇用統計のヘッドライン的な「非農業部門新規雇用者数」と「失業率」の振れは大きいが、市場の反応は一時的に留まるので、あまり振り回されないほうが賢明だろう。
そして、金価格は1260ドル台に急落。ドル全面高に対して当然の反応。やっと下がってくれたか、という感じで、違和感はない。下支え役のウクライナ・イラクの地政学的要因が陳腐化してきた。連日、ウクライナだイラクだと騒いでいると、市場も慣れっこになってしまうのだ。そろそろ、買いの値頃感もでてきた。特に円安進行で、円建て金価格に著変はないので。
さすがのパラジウムの上げも一服。900ドル越えたところで売られ、880ドル台まで下げた。それでも高い水準ゆえ、これも、当然の調整局面といえる。
下がってくると、私のアドレナリンも徐々に湧いて出てくるね(笑)。
さて、昨晩の日経CNBCネット配信(ニコ動でも同時配信)番組での写真を添付します。ご覧のように、「手作り感」いっぱいで笑いが絶えない楽しい番組でした。今日の午後にも最初の15分だけ、YOU TUBEで公開されるとのこと。
https://www.youtube.com/watch?v=xdwJbEcnv4w
私は例によって、事前打ち合わせ無視で、言いたい放題。スッキリして帰宅しましたよ(笑)。
安倍内閣改造で女性6名入閣と報道されているように、今や、働く女性の地位向上やワーママの問題はアベノミクスの目玉になった感さえあるので、「マーケットの裏表とウーマノミクス」というタイトルはタイムリーな設定でした。副代表の治部れんげも、持論を熱く語っていました。生中継中は目の前に視聴者からの書き込みがリアルタイムで表示されるのでインターアクティブに進行できるのが、この種の番組の醍醐味。普通は、えげつない書き込みも多いのだけど、昨晩は非常に熱心で好意的な書き込みが多かったです。
昨日の午後には村井美樹さんとの雑誌対談もあり、めまぐるしかった。これも撮影風景の写真を添付しますが、逆光でうまく撮れてません。事務所のある高層マンションの43階会議室からの光景は分かると思います。村井さんは、「知的タレント」で売っているだけあって、頭の回転が速いので助かります。