豊島逸夫の手帖

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原油価格急落とドル高進行

2014年10月1日

30日のNY市場でWTI原油先物価格が3ドル以上急落。91ドル台まで下げ、80ドル台への価格下落予測も散見されるようになった。いっぽう、ブレントも2ドル以上下げ、94ドル台に沈んでいる。
今回の原油急落の引き金を引いたのは、やはりドル高進行。
更に、市場内部要因としては、原油オプション市場で、9月に5百万バーレルを80ドルで売る権利を得るプットオプションの売買が成立していたことが、市場公表統計により明らかになったことが挙げられる。
当事者はメキシコと見られている。同国は国家予算の1/3を原油輸出に依存するので、原油市場に先安観が強まる中で、ヘッジ売りをかけたようだ。

中期的な視点では、IEA(国際エネルギー機関)に加えOPECまでも、2015年原油需要見通しを引き下げたことが見逃せない。
需要サイドでは今や米国を抜き世界最大の原油輸入国である中国の経済減速。そして、欧州のディスインフレ傾向も需要減に拍車をかける。
生産面では、「イスラム国」などの地政学的リスクにもかかわらず、OPEC全体の生産は増加傾向である。イラク・リビアの原油生産は回復傾向なのだ。両国とも、これまで失われた原油生産を取りもどすべく、増産意欲は強い。
サウジアラビアの潜在的生産余力も依然大きい。

いっぽう、米国の原油生産はシェール革命により急増。住商の失敗は、「資源ビジネスにつきまとうリスク」の例であり、米国全体から見れば、ひとつのイベント扱いである。米国の生産量は今やサウジアラビアを追い抜く勢いなのだ。そうなると、産油国サウジアラビアは危機感を募らせる。
原油生産世界一の座をロシア、サウジアラビア、米国が争う展開となっているのだ。
OPECの内部亀裂が悪化すれば、需給バランスが崩れ、90ドル割れも絵空事とは言えなくなる。

なお、マクロ経済的には、これから冬の需要期に入り、原油価格下落は消費者にとって朗報だ。
特に、車社会の米国では、原油価格下落は「減税」と同様の効果をもたらす。
いっぽう、日本では、円安の急速な進行で、円建て原油価格は下がりにくい構図だ。
ここにも、米国経済の相対的優位性が見られるのだ。

2014年