2014年6月19日
ダウ平均がスルスルと上昇を加速したのは、FOMC後の記者会見の席で、記者から株価についての直接的質問が出たときだった。
イエレン議長の答えは「FOMCは様々な要因を考慮したうえで、株価の収益や配当に関するバリュエーションを、歴史的な水準と比較している。更に、(米国株価が史上最高水準にあることに触れて)現在の株価が、その歴史的水準から乖離しているか、との質問に対しては、「おおむね、そのようには見ていない」と答えた。このやりとりが、「イエレン議長は史上最高値水準をバブルとは見ていない」と市場では解釈されたのだ。
いっぽう、記者会見前に発表された恒例の「FRB経済予測」の中で特に注目されたドット・プロット(昨日本欄に詳述)では、今回、参加者の長期の政策金利目標値が下落していることが市場の関心をよんだ。
(2017年以降)の長期予測分布
3.25% | 3.5% | 3.75% | 4% | 4.25% | |
今回 |
1 |
3 |
7 |
3 |
2 |
前回 |
4 |
2 |
8 |
2 |
中心値が前回の4%から今回は3.75%に下がっている。更に、前回はなかった3.25%が一人だけだが増えている。
これは、市場内に拡散してきた「低金利、長期継続」見通しの裏付けともなりうる数字である。
特に債券市場は敏感に反応して、米国10年債利回りが再び2.6%を割り込んだ。それに呼応するかのように、ドル円も102円10-20銭から101円90銭台へ「円高」の反応を見せた。
なお、市場の不安係数ともいわれるVIX指数も、再び11を割り込み、歴史的低水準にある。
この市場のボラティリティーの低さについては、記者会見でイエレン議長も「低すぎて懸念している」と語っている。「FOMCはボラティリティーに関する目標値は設定していないが、投資家のリスク志向の誘因となることで、過剰なレバレッジを伴うかもしれない。後々、金融市場不安定化のリスクとなりうる。これは私と委員会の懸念である。」と警告を発している。
なお、今回のFOMCの一日目の17日に発表された5月の米消費者物価指数0.4%↑という予想外の上昇について、昨日本欄で「記者会見で、この点についての質問が出ることは必至」と書いたが、いきなりその記者会見の最初の質問で出た。
それに対するイエレン議長の答えは「その数字はnoisyノイズである」。市場は騒いでノイズ・レベルが上がっているが、軽くスル―した感じである。記者からは、しきりに、それではbehind the curve=利上げが後手に回るのではないか、との懸念が語られていた。その点については、別の記者とのやりとりで、「物価上昇のペースが金利上昇のペースを上回るオーバーシュートが、金融正常化の過程では起こり得ること」とも述べていた。
筆者は、FOMC内のハト派とタカ派の亀裂がどのように垣間見れるか注目していたが、総じて、ハト派のイエレン議長が押し切った感が印象に残った。これには、経済界の大物スタンレー・フィッシャー氏がFRB副議長として正式に任命され今回からFOMCに参加したことが大きな支えになっていると思われる。
ただし、ドット・プロットで2015年末、2016年末短期金利予測の分布がかなりばらついていることに関しては、「不安定な状態」としてハト派とタカ派の亀裂を事実上認める発言もあった。
さて、結果的には、おおむね市場にフレンドリー(友好的)なトーンであったことから、株・債券・金が同時に買われる状況になっている。外為市場ではドル安・円高に振れている。リスクをとり史上最高値圏にある米国株も買うが、地政学的リスクのヘッジとして米国債や金も同時に買われる展開である。
なお、「FRB、利上げ時期はいつか」について、今日の日経電子版「ニュースまとめ読み」で各種記事がまとめられています。
http://www.nikkei.com/news/special/top/?uah=DF280820135604
今日の添付写真は、「千疋屋の涼しげな季節のフルーツ・スイーツ」。
おもたせを、事務所のテラスでいただきながら、打ち合わせしました。眼下に見えるのが勝鬨橋と隅田川。この季節になると、事務所の打ち合わせはテラスが気持ち良いので、外でやるのだけど、たまに高所恐怖症の人もいて(笑)、室内の椅子から参加してます。
事務所の界隈は、東京オリンピック・ブームで、新たに隅田川に橋がかかったり、環状二号線が整備されたり、新たな高層マンションが建ったり(供給過剰かと思いきや、結構売れてるので、ビックリ)、にわかに騒がしくなってます。今週は珍しく事務所にいることが多いけれど、来週はまた1週間出張です。その後は、国内のセミナー・シリーズで関西や九州を行ったり来たりという日程。まぁ、夏休み前の一仕事だね~