2014年2月4日
「NIKKEI 高値からの下げ10%を超す、テクニカルに調整局面入り」3日の欧米市場に、トップニュース扱いで早朝から走ったヘッドラインである。英語でNIKKEIは日経平均、そして日本株の代名詞になっている。
ニューヨーク市場では、朝方に発表された1月のISM製造業景況指数が、前月の56.5から51.3へ急速な悪化を示した。特に新規受注指数が64.4から51.2へ、1980年12月以来の下げ幅を記録したことが嫌気された。
次に発表された1月の新車販売も、総じて伸び悩み。
いずれも、1月の悪天候による特殊要因の影響とする見方が多いが、単にそれだけなのか、市場は疑心暗鬼である。
7日に発表される米雇用統計に関しても、悲観的見方が台頭している。
3日の米国市場は、各市場で「大台割れ」が相次いだこともマーケットのセンチメントを冷やした。
まず、ダウ平均が200日移動平均線を割り込んだこと。更に、ナスダックは4000の大台を割れた。
市場の不安を示すVIX指数は、20の大台を超えた。これは、米国財政危機に揺れた昨年10月以来のことである。
そして、債券市場では、米国10年債の利回りが2.6%を割り込んだ。マネーが「我先に」米国債へ質の逃避に走っている。2.5%がレンジの下限とされ、株式市場の地合いにも負の影響を与える水準とされる。
更に、外為市場では、今や欧米市場でもユーロ・ドルより注目されているドル円が101円を割れた。ここでも、ドルインデックスは81台を保ち、強烈なドル 安現象は生じていないので、対円でのドル安(円独歩高)傾向が鮮明である。やはり、逃避通貨として円が買われている証左だ。
商品市場では、やはり「相対的安全資産」として金が買われ、20ドル近く急騰して一時1260ドルを突破した。
週末1日に中国が発表した製造業PMIが50.5と半年ぶりの低水準となったことも、週明けの市場には、新興国不安を印象づけていた。
新興国波乱が、日本、そして米国にも「伝染」の兆しを、市場は不安視している。
くしくも、3日には、イエレン新FRB議長がFRB本部でのセレモニーで宣誓の後、正式に15代FRB議長に就任した。早速、11日には下院金融委員会、13日には上院での公聴会に臨む。
そこでの質疑応答が市場を揺らすことになろう。
マーケットには、テーパリング計画の変更の可能性も噂されている。バーナンキ前議長は、米国の景況感が急速に悪化すると、追加的量的緩和でテコ入れしたので、市場ではバーナンキ・プットを歓迎された。(下値をヘッジするプットオプションからの援用である。)
果たして、イエレン・プットも期待できるのか?
もはや、量的緩和は縮小態勢に入った。しかし、毎月の資産買い入れ量を減少すれば、実質的緩和継続延長と見なされよう。或いは、フォワード・ガイダンスで、量的緩和縮小から引き締め・利上げへの失業率6.5%の目途を引き下げ、これも実質的に先送りすることが出来る。
更に、バーナンキ氏最後のFOMCでは、新興国不安への言及がなかったが、イエレン氏の対応が注目される。既に、インド中銀総裁は、米国量的緩和縮小について、批判の声をあげている。
市場では、これまでDon't fight FRB (FRBには逆らうな)と言われてきたが、足元では、ウオッチFRBがキーワードになっている。
なお、先送りされてきた米国債務引き上げ問題の蒸し返しの時期が迫っていることも不安要因だ。
そして、日本市場には、円高の波と、株安の連鎖の影響が顕著となる。ヘッジファンドの円売り・日本株買いポジションが、かなり安易に偏って形成され てきたので、その巻き戻しが懸念される。今回の円高は、「逃避通貨」としての円買いと、米10年債利回り2.5%台へ低下による日米金利差の共振現象によ り増幅されている。
冒頭に紹介したヘッドラインに、欧米投資家は「日本株よ、おまえもか」との反応している。日本から見れば、日本株を動かせているのは、外国人投資家という ことになるのだが、まだ、日本株高の実態が把握されていないようだ。中国が春節なので、「日本株は下げで新年入り」などの見出しを大手米国経済紙で見るに つけても、日本についての認識がまだ浅いようだ。
さて、金プラチナスプレッドもアッという間に130ドル前後まで縮小した。リスクオフになると、金は買われ、プラチナは売られるという典型的現象。
それから円高で相殺されているので、円建て金価格に著変なし。