豊島逸夫の手帖

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問われるバフェット氏の「愛国心」

2014年8月27日


S&P500株価指数が引け値ベースで2000の大台を突破した日、ウオール街のホットな話題はバーガーキングのホートン社(カナダのコーヒー・ドーナッツチェーン)買収合意だった。


注目されたのは、インバージョン(節税のための本社移転)狙いのこの買収に、バフェット氏が25%程度出資と欧米メディアが報道したからだ。
バフェット氏といえば、常々「私の秘書より低い税率で、私の税申告をすべきではない」と語り、「庶民の味方」のスタンスをとってきた。年間所得100万ドル以上の富裕層に対し、所得税を30%以上に引き上げるという「バフェット・ルール」を提唱。
それに基づく、富裕層の節税対策制限法案をオバマ大統領が2011年に議会に提出するも、否決された経緯もある。
そのオバマ氏は、米国有力企業に広がるインバージョンの動きを、「非愛国的。違法か否かという問題ではなく、誤った行為だ。」と声高に批判してきた。
それゆえ、昨日は間髪入れず「バーガーキング・ボイコット」を語る上院議員も出て来た。


インバージョンの問題は、今年4月に米製薬大手のファイザー社が、英国の同業アストラゼネカに買収提案を提示するも、その後撤回という「幻の世界最大の製薬会社誕生」劇で、一躍注目される現象となった。米国の法人税率は州税を含むと40%近辺になるが、英国は法人税率を30%から20%へ引き下げの過程にあるからだ。


その後、米国の有力企業が相次いで欧州の企業をインバージョン狙いの買収に動いている。
英国とならび、法人税12.5%のアイルランドもインバージョンに関しては「人気国」だ。これらの国の医療関連銘柄が急騰する局面も見られた。


実は、オバマ大統領も、前回の大統領選挙で「法人税28%へ減税」を公約に掲げていた。ところが、「財政の崖」問題や米国債デフォルト懸念などで、企業向け減税策は先送りされてきた。そして中間選挙を控えた今、米国での法人税引き下げに関する議論がヒートアップするは必至の情勢だ。
そのようなタイミングで、カリスマ投資家のバフェット氏がインバージョン加担の如き行動に出たわけだ。本人は「税対策というより、カナダ限定のホートン社商圏を米国に拡大することのメリット」を強調している。


米国株価の高値警戒感も根強いなかで、法人税引き下げは株価の上げ要因となるので、市場の注目度も高い。
そして、この問題は、米国に次ぎ法人税率が高いとされる日本での法人実効税率引き下げ議論にも影響する可能性を秘める。
更に、米国株価の高値更新を、バブル的現象と見る市場関係者も多く、株価急落→金価格上昇のシナリオも無視できない。


さて、今日の朝日新聞朝刊に、先日の八木沼純子さんとの対談が載ってます。朝日新聞デジタルでも同時掲載です。↓


http://t.asahi.com/fn13

2014年