2014年6月9日
先週は二大イベント(ECB追加緩和と米雇用統計)が重なり、欧米市場では「今年最も重要な週の一つ」として認識された。
まず、米雇用統計だが、総じて、良いが、量的緩和縮小を早めるほど良くはない、という数字であった。イエレンFRB議長のこれまでの発言から推せば、「量的緩和縮小ペースに変化はなく、政策金利は超低水準に維持する。」ということになろう。
更に、同議長は「マクロ米国経済指標が改善しても、当面は低金利を据え置く」とも明言しているので、マーケットは低金利を利用したキャリートレードを仕掛けやすい地合いだ。いわゆるリスクオンとなりやすい市場環境といえる。
米雇用統計の注目される内訳は、「非農業部門新規雇用増加数」「失業率」「長期失業者数」「正規雇用希望のパートタイマー数」などが好転しているので、総合評価は良い。
但し、平均時給の伸びは鈍く、労働参加率は下げ止まったものの、歴史的には最低水準に低迷している。ベビーブーマーの定年退職など構造的な労総参加低下が主要因とすれば、米国経済の縮小均衡は避けられない。米長期金利低下の構造要因のひとつとも考えられる。
VIXは10を割り込み、NY株式市場は「静かな新高値更新」である。このような状況下では、米国から見た「国際分散投資」の傾向が強まりそうだ。新興国から米国に回帰したマネーが、再び海外に向かう兆しが見られる。
次に、欧州では、ECBの追加的流動性投入が、企業融資に廻らず、南欧国債などのリスク資産に流れる可能性が無視できない。スペイン10年債の利回りは遂に2.64%にまで低下。米国債の2.59%とほぼ同じとなった。どうみても、misprice「異常価格」現象である。ヘッジファンドの南欧国債買いも加速の様相を見せている。今回のECB追加緩和は、「ヘッジファンドを利し、預金者に酷」との批判も出始めた。
更に、ドラギ総裁は「まだ終わっていない」と追加緩和に含みを残す。
黒田日銀にとっても追加緩和決定の際の考慮すべき要因が増えた。
為替レートは「緩和度」の相対評価で決める傾向があるからだ。
ECB追加緩和の先手を打たないと、日銀追加緩和の効果が薄れるリスクがある。
今週はサッカー・ワールドカップがいよいよ始まる。
ECBは、インフレアレルギーの独連銀の影響力が強く、価格安定重視の傾向が顕著であったが、ここにきて、「価格」と「成長」のツートップ布陣を強化した。
対して、日銀は、「成長」重視のワントップ戦略に傾斜している。
日欧同時緩和に発する世界の市場モメンタム(勢い)により拡散するマネーの受け皿は、多岐に亘る。
その中に、プラチナ・パラジウムなども含まれている。
なお、今週号の日経ヴェリタス連載コラム「逸's OK!」では、「楽させられる金融ディーラー」というタイトルで、ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)議論にしきりに引き合いに出されるディーラー職について書いた。