2014年10月20日
「106円台でもうひと波乱起きるのはドル売りクライマックスとなりそうだ」と本欄14日付けに書いた。その後生じた、105円台までの円急騰局面が「ドル売りクライマックス」と指摘した。
そして、週明けの円相場は107円台をつけている。
しかし、中期的に見ると、先週後半以来、円相場の潮目に変化が見られる。
これまで円安を増幅させた「米量的緩和終了・早期利上げ観測」というドル高要因が揺らぎ始めたのだ。
発端は、IMFの2015年世界経済成長下方修正だった。
そして、16日のブラード・セントルイス連銀総裁「量的緩和終了先送り論」が、「潮目の変化」の兆しとなった。
タカ派寄りと見られていた同総裁のこの発言は「サプライズ性」があり、世界株安連鎖を止めた。一方、アナリストたちは2015年予測のベースシナリオ再精査を強いられた。前回の米雇用統計大幅改善後に勢いを得た「早期利上げ説」は影をひそめ、利上げ時期を2015年後半から2016年とする見解が急激に増えている。
ブラード氏は、投票権を持たないFOMCメンバーで、ときに発言がぶれるので、FOMC全体の見解を代表するものではない。しかし、マーケットで世界経済低迷が懸念されている時期に、特に、米国インフレ率低迷を理由に挙げたことは、正鵠を得ており、説得力を感じる。
おりしも、ユーロ圏物価上昇率は0.3%に沈み、中国も消費者物価上昇率が2%を割り込み、日本も消費増税効果を除く物価上昇率は1.1%台だ。
そこで、欧州中央銀行(ECB)クーレ専務理事は17日に「(ABS資産担保証券やカバードボンドを対象にした)新資産買い入れプログラムは、数日以内に実行段階にある」と明言した。
中国では、既に、5大商業銀行への5000億元の資金を供給したが、更に、他の商業銀行へ2000億元規模の追加流動性供給を検討中とも伝えられている。
あくまで仮定の話だが、米国が、欧州経済悪化・ドル高の影響を懸念して、QE4に踏み切れば、日米欧中、四極同時緩和という事態になる。
この量的緩和競争は、実質的に、通貨安競争となる。
但し、今回は、通貨安の輸出増効果もさることながら、自国インフレ率を高めるための政策との共通意図が透ける。
ここで、黒田日銀が、「円安のデメリット論」に配慮して、「追加緩和」について後手にまわれば、為替市場は円高に振れる可能性がある。「緩和度が足りない」通貨は買われてしまうからだ。
ときあたかも、降ってわいたような小渕大臣辞任は、今後の展開次第だが、円安をベースシナリオに据えるアベノミクス評価を(特に欧米で)低め、円高要因とされる可能性もある。
足元の円安はヘッジファンドの円売りポジションの買戻し手仕舞いが一巡という市場内要因によるところが大きい。
では、次の一手が、新規の円売り再開なのか、円買い転換なのか。
果たして、円安相場の潮目が変わるか。IMFショックを発端とした世界マネー騒擾は、思わぬ展開を見せている。