2014年4月15日
今回の新興国経済波乱は、米国量的緩和縮小と中国景況感悪化の二つのリスクの共振現象により誘発された。問題が拡散したキッカケはアルゼンチンの通貨暴落だが、その火付け役は、ホットマネーであった。
新興国通貨市場は、規模も小さく流動性は限定的ゆえ、ボラティリティーが高く、ヘッジファンドには格好の標的になりやすい。
更に、アルゼンチンは、ブラジル製品の最大輸出先なので、火事は忽ち延焼した。
投資家のリスク選好度が萎縮したところを狙って、ホットマネーは、次にその矛先を、ブラジル・レアル、トルコ・リラ、南ア・ランドに向けた。
そして、高頻度取引を駆使するヘッジファンドの「急ぎばたらき」第一幕は終わり、新興国経済を見直す動きも見られる。
このマネー騒乱を、FDI(直接投資)や年金基金などは、ただ傍観するのみだ。ゆえに、リアルマネーに大規模な撤退現象は見られず、新興国経済危機に発展するリスクは低い。
但し、「新興国」という一つの主権国家があるわけではないので、国別のカントリーリスクにはミクロ目線の注意が必要だ。格付け会社の評価も微妙に異 なる。経済政策の優先順位も、通貨防衛(為替政策)、インフレ抑制(金融政策)、雇用維持(財政政策)の切迫性により入れ替わる。
まず、そもそもの火元のアルゼンチンは、最悪といえる。
実勢で30%近いインフレ率(公式発表は11%)に対して政府はこれまでほぼ無策であった。やっと6%の利上げにより政策金利を26%に引き上げたが、ブ ラックマーケットでの市民のペソ売り、米ドル買いは収まる気配がない。政府への信頼は容易に回復できまい。ムーディーズは、ペソが年内に更に50%下落す ると予測している。まさにカオスの様相である。
対して、ブラジルのインフレ率は、同国中銀が目標とするレンジの上限に近い水準だが、それでも4.5%でなんとか収まっている。しかし、そのインフレ抑制 のために、金利を二桁にまで引き上げざるを得なかった。そこで、財政投入とのポリシー・ミックスでサッカー・ワールドカップと大統領選挙を乗り切る構え だ。3750億ドルの外貨準備があるので、外為市場介入の余力を残すが、格付け会社は、発表された財政赤字統計の粉飾を疑っている。
そして、トルコ。
ここでは、エルドアン首相とトルコ中銀の葛藤が問題だ。中央銀行の独立性維持が危うい。同首相は、高金利がまわりまわって物価上昇を招くとの特異な考えを 強硬に主張し続けている。更に、税収を間接税と輸入関税に依存する構造なので、民間の消費が増え、経常赤字も増加すれば、税収も増えることになる。その経 常収支ファイナンスは、海外短期マネーに依存している。
フラジャイル・ファイブ(脆弱な5か国)に入れられたインドネシアでは、流入した緩和マネーをインフラ投資などの構造改革に廻さず、そのツケが、洪水や慢性的交通渋滞を招いている。
しかし、5回にわたる利上げで、経常収支赤字は、2013年に対GDP比で3.6%まで縮小。今年は3%までの改善が見込まれている。
南アは、5年ぶりの利上げに踏み切ったが、慢性的電力不足、ANC政権の腐敗、基幹産業の鉱山関連ストライキ頻発、25%の失業率など問題山積だ。
総じて、新興国不安第二幕も視野に入れておく必要があろう。
足元では、再びウクライナ緊迫で、貴金属価格が全般に高い。イエレンFRB議長の緩和継続スタンスも上げ要因となっている。とはいえ、いずれFRBの政策 金利(FFレート)引き上げは不可避だ。そこで、再び売り込まれることになろう。今の上げはホンモノではない。執行猶予が延びた程度である。
但し、今年だけに関していえばプラチナは金より上げ余地を残す。パラジウムは市場が更に小さいので、短期勝負の相場とならざるを得ない。
欧米はイースターの休暇モード。私は3日ほど、知人の京都の茶室でお茶のお稽古をしてきました。「煎茶道」で至って自由なお茶の流派だけどね。
満月が庭園の石を明るく照らす夜、ネットとかマーケットから完全に遮断された状態で世俗の垢を落としてきました。よく「休むも相場」といいますが、距離を置く時間も必要です。
京都のセミナーでは、お茶会仕出し専門の名店「三友居」の社長さんとも知り合いました。いずれは、京都の庵にブルームバーグ回線引いて、などと「ふとどき」なことも考えております(笑)。
筍の季節なので、朝どれ筍も堪能してきました。桜は仁和寺が良かったけど、人と車が多すぎ。
早々に庵に引き上げてきました。昼は20度を超す暖かさでも、夜の散歩はダウンジャケット着用でもいいくらい冷え込む季節です。