2014年4月10日
9日に発表されたFOMC議事録を読んだ市場は、「低金利継続」の安堵感に浸った。記者会見でのイエレン議長の「量的緩和終了から利上げまで6ヶ月くらいかも」との発言は、FOMCでは議論されておらず、「口走り」であることが確認された。
更に、FRBがFOMC声明と同時に発表する「経済予測」の数字が「誤解を招く」とやり玉にあがったことも判明した。
具体的には「ドット・チャート」を呼ばれる点の分布図でFOMC参加者の将来の金利予測を示すグラフのことである。
FFレート(米国の政策金利)が2014年末、2015年末、2016年末、それ以降と、何%で推移するか、FOMC参加者の予測を、ドット(点)の分布図で表している。
2,014年3月時点でのドット分布は以下のようになっている。
2014年末 | 2015年末 | |
0.25% | 15個 | 2個 |
---|---|---|
0.5% | ― | 2個 |
0.75% | ― | 2個 |
1% | 1個 | 5個 |
1.25% | ― | 1個 |
1.5% | ― | 1個 |
2% | ― | 1個 |
2.25% | ― | 1個 |
3% | ― | 1個 |
そして2016年末になると、1%から4%のレンジで細長く分布しており、「それ以降」になると、ほぼ4%に収斂している。
チャートを見たければ、↓以下のFRBサイトの3ページ目にある。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140319.pdf#search='FRB+summary+of+economic+projections+dot+plot'
この「予測ドット・チャート」を見る限り、前回より、予測金利水準が高めになっていることから、「この数字を発表すると、市場は、利上げが予想より 早い」と誤解するのではないか、との懸念が3月のFOMCでは数名の参加者から指摘されていたことが明らかになった。そこで、「この予測値は、FOMCの 金利政策を表現したものではない」ことが声明文にも明記され、イエレン議長自身も記者会見で念を押したのだ。
この経過が議事録でも明らかになり、実はFOMCの真意は、利上げを急ぐ印象を与えたくないのだ、ということが確認された。
しかも、今回の議事録で初めて明らかになったことなのだが、3月18-19日のFOMC本番に備えて、3月4日にイエレン議長はFOMC参加者と「内部根回し」と思われる「ビデオ電話会議」を行っていた。
結果的には、それだけ周到な準備をしたにもかかわらず、記者会見での不用意な「6ヶ月発言」だけが市場の記憶に残るような展開になってしまったことは、FRBの市場とのコミュニケーションの難しさを浮き彫りにしている。
とはいえ、9日発表のFOMC議事録を読み、市場は「FOMCは利上げを急いでいない」ことを重視した。
なお、「失業率」が利上げ議論開始の目途としての指標からはっきり外されたことも議事録により再確認された。
しかし、これで、市場とのコミュニケーションは更に難しくなったともいえる。
代替案として、長期失業者、労働参加率、賃金指標などの複数の統計数値を利上げ決定の判断材料とする手法が浮上している。しかし、これでは、益々煩雑で分かりにくくなることは間違いない。
そもそもフォワード・ガイダンスという将来の金融政策を明示する手法では、「判断基準」をいつでも変えられる。失業率がその最たる例で、6.5%を目途に 利上げ議論開始と「明示」していたところが、予想より早く失業率が下がり、早くも6.7%の水準になってしまった。そこで、あっさりと、失業率は外す、と 宣言されると、今後新たな指標が採用されても、市場は「朝令暮改」の可能性に揺れることになろう。
なお、これも今回初めてのことだが、「中国経済減速が商品価格を下落させ、世界経済に悪影響を与える」リスクがFOMCで議論されていた。しかし、ウクライナ危機は「おかまいなし」と議論されなかったようだ。
総じて、市場はFOMC内の「タカ派」の発言が少なかったこともあり、ハト派イエレン議長を歓迎ムードになっている。
利上げによる米国債市場波乱のリスクも遠のき、長期金利も年初予測された3%水準(10年債利回り)を大きく下回っている。
リスクオンでNY株も金価格も上昇中だ。
日本側で気になることは、外為市場のドル安傾向だろう。
FOMC議事録発表前日に、黒田日銀総裁が「需給ギャップゼロ」発言で明確に当面の追加緩和を否定したわけで、今回の円高トレンドは底流が深い。
米国は緩和継続、日本は追加緩和せず、となれば日米金利差縮小は避けがたい。
日米中央銀行主導型の円高の様相である。
さて、今日の日経CNBCデリバティブ番組(午後5時と7時45分くらい)で金価格見通し語ります。詳しくは、日経朝刊BSテレビ欄 BSハイライトに出ています。敢えて、FOMC要旨発表翌日に設定しました。
最後に今朝のおめざ(笑)。
名古屋、美濃忠の「上がり羊羹」。
上がりとは献上品のことらしい。
ういろうみたいな食感だけど、ほんのり甘く、後引く。
このブログで名古屋スイーツといえば、名古屋出身の森下千里ちゃん推薦の「しるこサンド」とか岐阜の「栗きんとん」だったけど、「上がり羊羹」はトップレ ベルだね。「上がり」のネーミングは投資家には「縁起物」かも。プラチナ買って上がり羊羹食べるか、上がり羊羹食べてプラチナ買うか(笑)。