豊島逸夫の手帖

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ウイーンで読む原油価格

2014年6月12日

欧州出張でウィーンに来ている。11日には当地でOPEC総会が開催されたので、原油市場関係者と意見交換した。12日にはオーストリア中銀総裁とのインタビューが予定され、ECB追加緩和・ユーロの行方について直接斬り込んでみたい。

まずは、OPEC総会については、ウィーン市内の老舗ホテルには、記者団とOPEC各国首脳が集結している。「グランドホテル」はサウジアラビア陣営の本拠地。対して、「インターコンチネンタルホテル」はイラン側の拠点。ちなみに、筆者はインターコンチネンタルがウィーンでの常宿である。こちらには、外国通信社もペルシャ語堪能な記者を送り込んでいる。

特に、現状のOPEC内は、サウジアラビアとイランの対立の構図が鮮明だ。核開発停止協定(まだ流動的)に動いたイランは、経済制裁が解除になれば、「原油価格が20ドルになっても増産する」などと石油相が述べている。しかし、生産再開のプロセスは簡単ではない。時間がかかる。

対して、サウジアラビアは、米国がイラン側に譲歩の姿勢を見せたことに危機感を募らせる。

このOPEC二大国の構図に他の生産国が絡み、更に複合的な不安要因が生じている。


OPECの抱える最大の問題は、米国シェール革命というライバル出現もさることながら、内部亀裂が制御不能に陥っていることであろう。

具体的には、イラン・イラク・リビアが国内不安で生産が落ち込む間に、サウジアラビア・クエート・UAEは「漁夫の利」を得た。生産不足を補うためにフル稼働してきたからだ。

それに対し、イラン・イラク・リビアは当然おもしろくない。「奪われたシェアは取り戻す。」と気勢を挙げる。

しかし、足元ではイラクの北方地域に武装集団が侵攻して、その火の子がトルコにまで及び、俄かに地政学的リスクが高まっている。

そもそもOPECは、原油価格下落時には価格下支え役となるが、価格上昇時には、内部のコンセンサスがまとまりにくい傾向がある。

現在のように価格が高止まりしているときは、サウジを含め参加国がOPEC生産目標を無視している。

総じてウィーンで感じることは、2014年には、イラン・イラク・リビアの生産設備再稼働による増産が困難で、OPEC内も現状維持。2015-2016年に内部亀裂が顕著になりそうだ。

凋落したとはいえOPECの総生産力はまだまだ軽視できない。

次回は、ECB追加緩和とユーロについて、現地の空気を吸って感じたことを纏める。

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ウィーンはスイーツ好きには、たまらないね。これは絶品のシャーベット。しかし、気温35℃にはげんなり。

2014年