豊島逸夫の手帖

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FOMC議事録のタカ派発言に市場は反応

2014年2月20日


バーナンキ体制最後のFOMCでの議事録が19日に発表された。
注目点は以下の3つのポイントについてFOMCにて交わされた議論の内容であった。
1、米国景気の現状分析。雇用・住宅統計悪化の理由は寒波だけか。
2、量的緩和縮小は現在の月100億ドルずつ縮小のペースを続けるのか。変更はないか。
3、利上げ時期の目途として、失業率の妥当性が問われるなかで、他の指標導入が検討されたのか。
以上の関しての議論は、ひとことでいって、「FOMC内で意見が割れている」ことが確認された。要はハト派、タカ派の意見が交錯ということだが、市場は特に以下のタカ派的発言に注目して反応した。
それは「数人が、利上げ時期を前倒すべし」との意見である。
a fewという単語が使われているので、2-3名と思われる。
そこで、まず想像されるのは、「タカ派の巨匠」といわれるフィラデルフィア連銀プロッサー総裁とダラス連銀フィッシャー総裁の二人である。両者とも2014年のFOMCで投票権を持つ。
加えて、19日にはアトランタ連銀ロックハート総裁が、「最近のFOMCでの議論によれば、2015年後半に短期金利が引き上げられるかもしれない。」と 語った。地元ジョージア州の新聞報道によれば、マーサー大学で50名ほどの地元財界関係者を集めての会合であったという。
同総裁は、2014年の経済成長率を2.5%から3%と見込み、「前年同期より経済のファンダメンタルズは著しく(notable)改善しているので、楽観的見通しである。」と語っている。
また、同じ19日に、サンフランシスコ連銀ウイリアムズ総裁がCNBCテレビに生出演して「量的緩和縮小の中断ありや、とのご質問にお答えは出来かねる が、12月に決めた量的緩和縮小ペースを変えるためのハードルは高い。雇用統計悪化も、一時的な振れに過剰反応すべきではない。中期的には、失業率が 6.5%に向けて下落トレンドであり、経済は改善に向かっている。」と述べている。


以上をまとめると、FOMCでのタカ派の発言の記録と19日の二人の連銀総裁の単独発言が相乗効果を生み、市場が反応したと思われる。
即ち、議事録発表直後の値動きは、10年債利回りが2.71%から2.73%へ上昇。ダウ平均は下げて89ドル安で引けた。ドルインデックスは80.10 台から80.20台の後半まで上昇(ドル高)。円相場も、発表前は101.80台まで円高が進行していたが、発表直後から102.30台まで円安に振れ た。


そして、金価格は1時間ほどで1320ドルから1310ドルまで急落している。テーパリングを嫌気して下落してきた金は、最近の米国マクロ経済デー タ悪化により「量的緩和縮小の中断の可能性もある」との見方で急反騰してきた。その「中断の可能性」が再び疑問視されたことで、金は売られたわけだ。特 に、金利を生まない金は、ゼロ金利ゆえ買われてきた経緯もあり、利上げが視野に入ると他の資産価格より敏感に反応する。昨年も、バーナンキ前FRB議長の テーパリング発言より前の4月の時点で、その可能性を先取りするように暴落している。特にヘッジファンドの逃げ足は速かった。その意味では、先行指標とみ なされることもある。


次の市場の注目はやはり3月7日発表の雇用統計だが、それまでの期間中も、地区連銀総裁の発言に市場は神経質に反応しそうだ。


なお、米国経済の見方や、フォワード・ガイダンスの変更(失業率・インフレ率以外の指標の導入)の可能性については、色々な意見が併記され、FOMC内の亀裂を印象づけた。イエレン体制の船出は荒れ模様である。



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(昨年は、皆がムック購入した後でセミナー告知して、もう購入済みの人が多かったから、今年は早めに予定だけでも告知しておきます。)

2014年