豊島逸夫の手帖

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歴史的ドル高の予感

2014年9月29日

ドル高が歴史的相場の様相を見せ始めた。
ニクソンショックが為替を固定相場から変動相場制へ転換させて以来初めて、先週末でドルインデックスが11週連続上昇となったのだ。
リーマンショック以降の相場で見ても、2011年以降、ドル高局面においてドルインデックスが85の大台を突破することはなく、市場では「84の壁」と言われてきた。
それが先週末は85.70台をつけている。
長らく続いた「ドル安の時代」の本格終焉を告げるかのような現象だ。
ヘッジファンドとの対話では、trajectory(軌道)という言葉が頻繁に出る。今回のドル高は日米欧金融政策の軌道が異なることに起因するという意味で使われる単語だ。
量的緩和終了の米国、量的緩和最盛期の日本、量的緩和検討中の欧州。この軌道差が、金利差となり、為替の変動要因となっている。根は深い。
それだけに、ドル・ロング(買い持ち)ポジションを抱えたヘッジファンドのドル高を見据える視線は当初の予想以上に高い。
現場で「相場は怖い」と感じるのは、ホット・マネーの演出で109円台へ円安が急速に進行すると、それが既成事実になり、そこに新たなレンジが形成されることだ。「109円へのスピードが速すぎる」と、筆者が彼らに反論しても、「あとの祭り」である。ヘッジファンドは「金融政策の軌道差がもたらした現象。これが相場。」と割り切る。
「過度な円安は日本経済のためならず」と論じたところで、世界的なドル高トレンドが変わるわけでもない。
それどころか、「8月の消費者物価上昇率は、消費増税の影響を除くと1.1%にとどまる」ことが市場に流れると、「物価目標の達成が難しい状況になれば躊躇なく追加緩和だろうとなんだろうと調整してゆく」との黒田発言がより切迫感をもって蒸し返される。


今週末発表の米雇用統計にしても、事前予測どおり良ければ、早期利上げ観測が勢いを得てドル高。悪ければ、一旦、ドル高ポジションを手仕舞う動きも出るだろうが、下がったところで、再びドルは買い直される。こう読むと、ホットマネーといえど、中期的にドル・ロング志向は変わらない。
特に、今年は、ヘッジファンドの殆どが年初「テーパリング終了の2014年は10年債利回りも3-3.5%へ上昇」と見込み、金利高を運用方針のベースシナリオに据えた。それが、みごとに裏切られ、パフォーマンス上の失地回復を迫られている。そこで、現在進行中のドル高トレンドから得られるリターンをいかに最大化するか。彼らにとっては、願ってもないチャンスなのだ。


ドル買いの反対取引として選択される通貨は、まずユーロ。そして円。更に新興国通貨。
先週は、対ドルでユーロが1.29台から1.27台まで再び売り込まれた。その結果、足元では、対ドルでの円売りに「出遅れ感」が生じている。円は対ドルでこそ円安だが、対ユーロでは円高に転じているのだ。
以前、本欄で、今の外為不等式は、ドル>円>ユーロ、あるいはドル>ユーロ>円。マラソンに例えれば、ドルが独走、2位の座は円とユーロが抜きつ抜かれつ、と表現した。ECB理事会後のドラギ発言や日銀政策決定会合後の黒田発言などが二位争いに拍車をかける。先週は、欧州景況感悪化の中で、ECB本格量的緩和不可避の観測がユーロ売りを加速させた。今週は「出遅れた」円売りがユーロ売りを激しく追走する番に思える。


もはや、歴史の視点が必要になったドル高ゆえ、ヘッジファンドの狙うターゲット・レンジも、110から115の水準に切り上がってきた。それでも、ニクソンショック以来のドル円相場の推移をみれば、まだ「歴史的円安水準」とは言い切れない。
日銀の金融政策微調整で対ユーロの円相場はかなり修正できるが、対ドルの円安は、もはや制御不能に近い。
円安の恩恵を受ける人と受けない人の「格差」は拡大してゆきそうだ。
資産運用面では、ルーレットに例えれば、「円」だけに賭けるリスクを普通の個人でも感じることになろう。
衣食住のかなりの部分を輸入品に頼る日本人だが、財布のなかみだけはメイド・イン・ジャパンの円紙幣が殆どだった。「外貨建て資産はリスクがあり怖い」という既成概念がこれまでは支配してきた。
しかし、今後は「円だけを持つリスク」「通貨安ヘッジ」がいやでも意識されることになろう。
金を保有する意味のひとつが、そこにある。金はドル建て資産なのだ。


さて、昨日は日経CNBC主催で500人規模のビッグ・セミナー。
業界連合のイベントも含めて、ゴールドセミナーとしてはこの一年で最大の規模だった。スクリーンもセミナー会場としては日本一の大きさ。だから、レジュメ配らず、とにかくスクリーンの写真やグラフを見てもらいつつ、私が2時間近く喋りっぱなし(笑)。
写真はファンの方からの差し入れ。におい袋。
私は常にスーツのポケットや、鞄の中に、しのばせているので、
なによりのもので大歓迎!この匂いを嗅ぐと癒されるのだよね。
こういう匂い系の差し入れはまた期待してます(笑)。

におい袋

2014年