豊島逸夫の手帖

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sell in May  鍵はイエレンとプーチン

2014年5月7日


日本の連休中にリスクオフが進み、「逃避通貨」として円が買われ、101円台で推移している。
金は1300ドル台を回復した。


注目のウクライナ情勢は、東部スラビャンスクでのウクライナ軍と親ロ派の攻防激化に加え、南部オデッサでも両派衝突により多数の死傷者が出た。
オデッサは、黒海に面する重要港湾都市として歴史的に戦いの場となってきた。特に1941年の独ソオデッサ防衛戦では、ナチスと同盟したルーマニア軍の参 戦により、ソ連軍はクリミア半島セヴァストーポリまで退却。その後現地では、激しい抵抗活動が続いたことで、ロシアにとっては因縁の地なのだ。
そこで労働組合の建物が放火され多数の一般市民が犠牲になったと、ロシア側は報じ、「過激民族主義者」を非難している。
ウクライナ情勢は東部、南部、そして西部(沿ドニエストル)の3面に不安要素が拡散してきた。
内戦化前夜の様相である。
市場にはプーチンの次の一手が、いよいよ東部国境に集結している4万人ともいわれるロシア軍の越境か、との観測が流れる。
筆者は、プーチンがこれ以上ロシア経済の首を絞めるような行動には出ないと見るが、市場は切迫感というセンチメントでリスクオフに動く。


そして、2日発表の米雇用統計後の市場の動きも「sell in May」の兆しを予感させた。
非農業部門の新規雇用者数28万8千人増、失業率6.3%への急低下という好結果にもかかわらず、株価は逡巡し、ドルは売られた。
もはや非農業部門新規雇用者数と失業率だけを追っていても、マーケットは読めない。
バーナンキ時代からイエレン時代への移行に伴い、雇用統計の見方も「従来の市況の法則」が当てはまらなくなってきているのだ。
イエレンFRB議長の解釈によれば、問題は、パートタイマー、長期失業者、求職を諦める人たちが依然多いことで、インフレ率がFRB目標の2%を大きく下回る1%前後に低迷していることなのだ。
2014年3月と4月の雇用・家計調査の各項目を比較すると、雇用者数の増加と失業率だけでは、労働市場の実態が把握できないことが明白である。


3月 4月 評価
非農業部門
新規雇用
増加数
(単位千人)
203 288
(製造、建設、商業、教育,健康、弁護士・医師などの広範囲の職業にわたり増加を見せた。2月分も19万7千人から22万2千人に、3月分も19万2千人から20万3千人に上方修正された)

平均週労働時間
(平均)

34.5 34.5

平均時給
(ドル)

24.31 24.31

労働参加率
(%)

63.2 62.8 ×

労働者数
(単位千人)

156,227 155,421 ×
(80万6千人が労働市場から脱落した)

失業率
(%)

6.7 6.3
(労働参加率低下による面もあるので◎とはならない)

長期失業者
(単位千人)

3,739 3,452
(27週以上の長期失業者数は28万7千人減少したが、長期失業者は履歴書選考の段階で振り落とされる傾向など構造要因が残る)

その結果、従来の判断基準では極めて良好とされる雇用統計の数字にもかかわらず、米債券市場では、10年債の利回りが2.5%台にまで下がってきた。年初予想された3%突破のシナリオとは真逆の展開となっている。
こうなると、日米金利差縮小とウクライナ情勢緊迫という二つの円高材料がジワリ効いてくる。
Sell in Mayへの警戒感もジワリ高まりつつある。
特にヘッジファンドが年初にたてた運用戦略の裏を突かれ苦戦していることで、今月の決算期前にポジション手仕舞いによる流動性ねん出を迫られる可能性がある。


2014年の運用戦略は1月の時点で、1)新興国株売り、日本株・欧州株買い、2)米国債売り、3)円売り、英ポンド買い、の3本柱に集約された。ところが、その後の展開で、当たったのは英ポンド買いくらいのものである。
それこそ、5月は売って、どこかに行ってしまいたい心境であろう。
地政学的要因は基本的に一過性。そして米国経済も中期的には寒波の影響から抜け出し回復に向かっているので、相場の持続的大混乱は避けられようが、5月の関門を抜ける瞬間には、乱気流への備えも必要となろう。


日本市場にとっては、円高の進行具合が気になるところだ。
95円などの極端な円高はまず考えにくいが、100円台の攻防程度のリスクは「想定内」に入れておくべきであろう。
中長期的なトレンドは引き続き円安である。


さて、連休は、東北にいました。
相場の5月は関門だけど、東北の5月は春爛漫!
採れたての「タラの芽」を村の食堂で揚げてもらって、


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アツアツのを食したのが、実にうまかったなぁ。東京のスーパーで売ってる小さい栽培ものとは違って、大きい!アルコールは飲まないけど、このときばかりは冷たいビールが合うと思った(笑)。
北国は梅、桜、桃の花が一斉に咲く時期で、一年で一番美しい風景が見られる。里に降りてゆくと、もう桜が終わって、緑が濃くなり始めているところもある。山に入れば、山桜が満開。
マーケットからは隔絶された世界にじっくり浸ってきました。
ガーラ湯沢のスキー前進基地も撤収。
今年はタップリ滑ったから、板もエッジもボロボロ。新しいのに買い替えねば。カラダの一部みたいに馴染んだので、名残惜しいけど。

2014年