豊島逸夫の手帖

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イエレン氏正念場のジャクソンホール

2014年8月22日


「FRBの現在の政策は"リスキー"」
「強い米国経済への対応として、利上げを"極めて早く"迫られるかもしれない」
「利上げの対応が後手にまわれば、その結果は、"トラウマの如く衝撃的"。そのときは、出遅れを認識して、慌てて追いつこうとするからだ」
「政策決定指標としての賃金にフォーカスすることも"賢明ではない"。インフレの遅行指標で、"先見性は良くない"」
これらは、日本時間22日早朝、米国経済チャンネルにジャクソンホールから生出演したプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁の発言である。7月のFOMC声明文で、ただひとり反対論あり、と明記された「タカ派の巨匠」で、しばしば率直な発言を披歴することで知られる存在だ。
同氏の具体的コメントは20日発表されたFOMC議事要旨(7月)にも記されていなかっただけに、超ハト派のイエレン氏との「FOMC内部の亀裂」が露呈した感さえある発言であった。
市場が注目する、22日のジャクソンホールでのイエレン氏講演の17時間前に、まずタカ派のエースが投じた牽制球とも言えようか。


21日には、その前にも、いくつか地区連銀総裁のインタビュー発言が市場に流れた。
ジャクソンホール・シンポジウム主催側のカンザスシティー地区連銀ジョージ総裁は、「投資家が、利上げはまだ先のことと信じているのは楽観的に過ぎる」と釘さし発言。
ウイリアムズ・サンフランシスコ地区連銀総裁は「2015年夏の利上げはリーズナブル(妥当)」と表現した。


7月のFOMC声明文では、プロッサー氏ひとりが反対論者として明記されていたが、20日公表された同FOMC議事要旨には、「相対的に迅速に緩和除去」を求める意見がsome(英文解釈では、少なくとも3-4名)あったと記されていたことが、裏付けられたのだ。
唯一、大物FRB副議長(ドラギECB総裁の恩師)フィッシャー氏が、先週ストックホルムで、米国経済について極めて厳しい見方を示し、ハト派色を強めたことが、イエレン氏にとっては、心強いサポーターといえようか。


更に、追い打ちをかけるように、21日には米国雇用・住宅関連指標も良い数字が次々と発表された。
まず、7月の中古住宅販売件数は515万戸で2.4%増と4ヶ月連続の増加。19日発表の新規住宅着工件数の急増(本欄20日付けにて詳述)を裏付けるデータで、住宅市場の回復を印象づけた。そして、雇用面でも、失業保険新規申請数(8月16日までの週)が29万8000件と1万4000件の減少。趨勢的に見ても、30万件前後と従来より低い水準に収斂してきた。
加えて、景気先行指数(コンファレンスボード発表)は103.3と6年9ヶ月ぶりの高水準。
8月の製造業景況指数(フィラデルフィア連銀発表)も、28.0と4.1ポイントと事前予測を大幅に上回る増加を見せている。
かくして、超ハト派のイエレン議長も外堀を埋められてきた感が強い。


いっぽう、市場のセンチメントも変化している。
20日のFOMC議事要旨発表前までは、ジャクソンホールでイエレン議長が従来通りのハト派路線を繰り返し、サプライズなしとの予測が圧倒的に多かった。しかし、同議事要旨で、先述の如く、タカ派の数がsomeと表現され、かつ、総じて、利上げ先送り論より、早期利上げ論のほうが明らかに多い内容だったので、楽観論が徐々に後退中だ。
なお、タカ派もハト派も利上げ最終決定は米国マクロデータ次第との点では意見が一致している。しかし、そのデータが明らかに上向きなので、中立派のFOMCメンバーも利上げ実施を視野に入れた発言に傾くわけだ。
とはいえ、米国株式市場の上昇は止まらない。投資家の「利上げ」に対する恐怖感は薄れ、リスク耐性は強まっているようだ。「利上げ」は米国経済本格回復の証しとの見方である。


外為市場でもドルが買われ、ドルインデックスは11ヶ月ぶりに82の大台を超えた。円も売られているが、ユーロ売りのモメンタム(勢い)は更に強い。日本経済より、欧州経済の「日本型デフレ」のほうが懸念されているからだ。
ちなみに、グローバルにマネーの流れを見ると、ユーロ圏からのマネー流出が顕著である。そのマネーが、米国に回帰している。しかし、2013年ノーベル経済学者シラー・エール大学教授が、「米国株価はバブル」と明言したことも伝わり、高値警戒感も根強く残る。そこで、次善のマネーの受け皿として、日本株もフォローされている。米国ジャンク債やポルトガル国債を買うリスク許容度があるならば、日本株のリスクは相対的に許容できる水準であろう。
ゆえに、市場参加者は、ジャクソンホールでの黒田発言にも注目している。現地時間土曜日にセッションのモデレーターとして登壇するようだが、市場の関心は、もっぱら「消費増税後の落ち込みを追加緩和でサポートするのか」という点に集中している。


なお、最もサプライズ性を秘めているのは、現地時間金曜午後に予定されているドラギECB総裁の講演だ。
欧州経済が停滞色を強める中で、ECBにも日米型本格的量的緩和を求める声が日増しに強まっているからだ。まずは、ABS(資産担保債券)の買取りと言う変形量的緩和が検討されているが、その実現性は定かでない。故に、失望感からユーロが売られるなどの反応が想定できる。
ジャクソンホール中銀会議から9月16,17日のFOMCにかけて、2014年「テーパリングの年」の相場も山場を迎えそうだ。


金価格は、米国利上げという売り要因と、ウクライナ・イラクの地政学的買い要因の綱引き状態。足元では、米国金融政策要因が優る。


さて、今朝のメルマガにこう書かれました。↓


■□■ 日経電子版 マネーメールマガジン 2014/8/22 ■


【編集部から】
谷村新司さんの「地球劇場」という番組(BS日テレ)に吉田拓郎さんが出ているのを見て、かれこれ2カ月くらい個人的に拓郎ブームです。初期の名曲「どうしてこんなに悲しいんだろう」などが、いまさらながら心にしみるきょうこのごろ。
番組冒頭でやった代表曲「落陽」が名演といいますか、カッコよかったためにこんなブームになってしまったのですが、もう68歳だそうです。なのに音的にもビジュアル的にも現役そのもので、声の渋みが増して、今のほうがいいくらいです。
拓郎といえば井上陽水で、陽水さんは若いころに「人生が二度あれば」で「父は今年二月で六十五 顔のシワはふえていくばかり」と歌いましたが、両大御所とも年齢とともに味わいを増すばかり。昔より老け込む年が10年くらい遅くなっていますね。私の身の回りでも「金のつぶやき」の豊島逸夫さんがそんな感じです。文章は壮年の記者のように勢いがあって、今週はニューヨーク出張をこなしながらライブ感のある原稿を送ってきています。豊島さんは拓郎より2つ下の1948年生まれで、陽水と同じ。「え、そんな年なの」と思われる読者も多いのでは。
(マネー編集長 深田武志)


この前、地上波のバラエティー番組に出たときは、「経済の世界のさだまさし」とか紹介されましたけど(笑)。
それほど懸命に頑張っている意識はないけど、常に気が張っているので、アドレナリンが出ていることはたしかだね。


今日の写真は、山形県鶴岡から直送の旬の「だだちゃ豆」


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毎年、いただくけれど、今年は暑いせいか、しまって甘い。
葡萄との相性もいいね。
大皿いっぱいのだだちゃ豆でお腹がいっぱい。

2014年