豊島逸夫の手帖

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元スイス銀行トレーダーのつぶやき

2014年11月18日

増税延期・解散というビッグ・イベントを控え、その前日にマイナスGDPサプライズで下値を試し、「弱い買い持ち筋」は振り落され、本番を迎える展開となった日本株。
円相場は結局116円台半ばで返ってきた。こちらも、円安の流れが試され確認された展開だ。
昨日は筆者も、当惑したNY系ヘッジファンドの電話攻勢に振り回され、かなり気持ちが揺れた。
しかし、モーニング・アフターとでもいおうか。仮眠程度なれど一晩寝て、頭がスッキリすると、なにやら、昨日の市場騒乱がなんだったのか、との反省モードに入っている。
まだまだ修業が足りない。

たまたま、昨晩は経済専門チャンネルで為替関連特番の収録が3時間ほどあったのだが(写真添付)、市場のプロたちと「本当に予測は当たらない」との反省会の場と化した。
アナリストもトレーダーもエコノミストも、生きた相場に振り回されている。相場の神様がいるとすれば、その手のひらのうえで、遊ばされている感じだ。
たまたま、週末来日していた著名投資家ジムロジャーズ氏も、常に「私は短期相場予測が下手。はずしまくり。恥ずかしいから、やらない。」と語り、割り切っている。

それでは、個人投資家は、なにをよすがにすればよいのか、との問いも聞こえてくる。
そこで、大切なことが、リスク耐性。「胆力」とでもいおうか。
肝臓が大きい人はストレス吸収能力(ついでにアルコール吸収能力)が強い。筆者も、トレーダー用人材をリクルートするとき、腹部レントゲン写真を持参させたものだ。
ところが、残念なことに、日本人は相対的に肝臓が小さい傾向がある。
ゆえに、日本人に合ったリスクの取り方に徹するべきだと、あらためて思う。
その実践法が、コツコツ「草食系投資」だ。
いまや、この用語もかなり普及してきたが、日本で最初にメディアで「草食系投資」という言葉を使ったのは筆者である。
2009年の著書のサブタイトルに「リーマンショックから一年。株・FXで連敗した肉食系投資家に贈る草食系利殖術のススメ」と書いた。
その後、セゾン投信中野社長やコモンズ投信渋澤会長と一緒に「草食投資セミナー」をやった。彼らからは「同隊名誉会長」とされている。
そんな筆者でも、NYでヘッジファンド相手に議論してくると、知らず知らず、肉食系に染まってしまうことがしばしばだ。
乱高下が繰り返される相場の中で、コツコツに徹することも容易ではない。

相場に悟りなどあり得ない。人間の心は欲に揺れるのだ。
己の欲をいかにコントロールできるか。
投資家は、その命題と永遠に対峙し続けるのだと思う。

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2014年