豊島逸夫の手帖

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理財商品の安楽死を模索する中国政府

2014年1月29日


昨日、日経コラムでは「中国の理財商品危機、回避の裏に天の声」と書いたが、そこには、中国経済のかかえる深刻なジレンマが透けて見える。
理財商品は大手商業銀行が販売するが、バランスシート上は簿外処理される。この簿外ルートを通じて、円換算で約120兆円が、インフラ構築・不動産開発に 流れたとされる。もはや理財商品による資金調達なくして、インフラ構築はたちゆかない。新指導部は、輸出・公共投資主導型から内需主導型への経済モデル転 換を志向するが、これには少なくも数年はかかる。その間、中国経済の「中成長」を維持して、ハードランディングを回避するには、やはり、インフラ構築プロ ジェクトが欠かせない。


いっぽう、多くの中国人個人投資家は、理財商品を、販売先の銀行ひいては政府の元本保証つきと理解して購入してきた。(筆者は中国の銀行の貴金属業務アドバイザーとして、一般理財商品セールス部隊のセミナーに同席したことがある。)

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そこで、中国政府は、今後、理財商品にはデフォルト・リスクが存在することを、知らしめねばならぬ。それは、早晩、どこかの理財商品のデフォルトを 黙認することが不可避であることを意味する。ただし、投資家がパニックに陥るような状況だけは避けねばならない。ウェイボーなどのネット上を通じて、不安 心理が一挙に拡散して、とりつけ騒ぎが勃発することが充分に考えられるからだ。
当面は、インフラ事業継続のために理財商品に対して「生かさず殺さず」の姿勢で臨み、投資家の痛みを最小限にとどめつつ、資金調達手段としての理財商品を徐々に「安楽死」させることが必要となろう。
理財商品に代わる資金調達手段としては、地方債市場の創設が挙げられる。
その意味では、理財商品のデフォルトは、健全な金融証券制度構築のために不可避なプロセスなのだ。


さて、昨日は久しぶりの名古屋セミナーでしたが、ブログ読者も多数みえてました。本番終わり、中締めの後の質疑応答が面白かったです。
普段、株をやっている投資家で初めて金のセミナーを聴いた人も多く、反応は様々でしたね。総じて、株が悪い時代には、金という新しい投資媒体など考える心の余裕もなかったけれど、株が動き始めて、やれやれ、金も考える余裕もできた、という感じでしょうか。
理屈から言えば、株が下がったとときこそ金なわけですが、投資最前線では、理屈通りには動いていない実態を感じます。
私は講演前は食事摂らないので、講演後はお腹ペコペコで、みそかつ定食をむさぼるように(笑)食べましたよ。濃いめの味が沁みた~~


日本時間明朝にバーナンキ最後のFOMC声明。
そして明日の日経CNBCに生出演してFOMC後の金価格動向を語ります。
午後5時(再放送が午後7時50分)から。

2014年