豊島逸夫の手帖

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ニューヨーク、ニューヨーク

2014年9月26日

ニューヨーク・ヤンキースタジアムのジータ選手、本拠地最終戦の劇的なサヨナラヒット見て、興奮してます。
スタジオに流れる、ニューヨーク、ニューヨークの曲や、マイウエイの曲。それにしても9回表には5-2でヤンキーズ勝っていて(黒田好投)、9回裏に救援投手打たれ5-5の同点。そして10回裏にランナー二塁でジータに打順が回り、引退前、最後の打席でサヨナラヒット打ってのけるという信じられない展開。

先週は、そのニューヨークで、iphone6発売,販売台数1000万突破、アリババ、史上最大の上場、FOMC、スコットランド独立選挙。
歴史的なビッグイベントが続き、高揚感も最高潮に達した現地市場の最前線で1週間過ごした後、帰国した筆者は、アドレナリンが抜けたあとの「セミの抜け殻状態」となった。それが、25日のNY株急落でやっと覚醒してきた感じだ。昨晩、NYから日本株や円に関するチャット・メールが急増して、揺り起こされた感もある。

本欄で「円売りパーティーには参加させてもらうが、会場をいつでも出られるように、出口に近いところに陣取るよ」という、某ヘッジファンドのジョークを紹介して、「FRB幹部講演などに翻弄され、ボラティリティーは高い状態が続く、警戒感は強い」と書いていた。
25日のNY株急落に、特段の理由はない。後講釈で、新製品iphone6の不具合が下げの理由に挙げられていることが象徴的だ。先週の宴の後のモーニング・アフターのコーヒーで現実に戻った感がある。(NYの朝はもう寒々となる季節だ。)
アリババ新規上場が流動性を吸い上げ、市場が「酸欠状態」に陥っていた、というタイミングでもある。

こういう機会に色めき立つのがヘッジファンドの習性。
満員の観客が、「火事だ(売りだ!)」の叫びで一斉に非常口に殺到する「劇場のシンドローム現象」が生じると、そこが、彼らにとって草刈り場となる。
「米国株から日本株への乗り換え」の兆しも、その一つの現象だ。
米国株急落の余波で、日本株も下げることを見込み、買い意欲を示していることを、昨晩のチャットで強く感じた。
東証のデータが海外勢の売り越しを示した1-8月の間、本欄では一貫して「海外マネーの日本株への買い意欲」に言及した。NYのヘッジファンド会合でアベノミクスについて講演したときの質疑応答、そして、プロ向け端末の筆者サイトにNYからのアクセスが急増していることなどが根拠であった。

そして、昨晩のNYからのメール・チャット攻勢。
先週NYのバーで深夜2時まで議論を戦わせた延長戦の様相となった。
「円売り、日本株買い」は、間違いなく米国のヘッジファンドから年金マネーまでの幅広い層にとって、一つの選択肢となっている。
「日経平均、今年の高値更新」と聞くと、一呼吸おく彼らだが、「NY安に連れ日本株も下落」というヘッドラインには、色めき立つのだ。

宴の後の米国株、日本型デフレ症状顕著な欧州株、ハードランディング・リスクが付きまとう中国株。そして、消費増税後の経済落ち込み顕著な日本株。このようなグローバルな市場環境の中、昨晩は「質への逃避」で米国債と金が買われた。しかし、あくまでもマネーのパーキング現象だ。リスク回避ばかりでは、運用担当者の存在そのものが問われる。
英語でthe lesser of two evilsという表現がある。日本の高校英語では「まだまし」と訳される。著名投資家ジムロジャーズ氏は、彼の今の「日本株買い」についてこの表現で語っていた。

金価格は欧州時間で一時1206ドルまで急落した、すわ、1200ドル割れかと思われたが、米株急落で一転リスクオフの金買い。1220ドル台まで買い戻された。地合いは、まだ1200ドルの大台攻防中。

2014年