豊島逸夫の手帖

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金プラチナ大変動

2014年12月2日

金価格は1140ドル台まで下げたあと、なんと1200ドル台(一時1220ドル台)まで急騰。プラチナも1180ドル台から1230ドル台まで急騰。円建てでも金はグラム180円前後、プラチナは110円前後の上げになっている。
特に理由もなく、投機マネーが、切った張ったの空中戦。
あえて理由を探せば、原油・ドルの乱高下に振られているかな。
原油価格も、セリング・クライマックスのあと昨日は4%もの急反騰だから。
長期の流れでみれば、1200ドル以下の底値圏を荒っぽい値動きで固めている段階。
長期派は黙って安いところを拾っておけばいい。短期派は、手を出さないほうがいい。

そして、突然の日本国債格下げで臨時に昨晩書いた原稿と、その続編を以下に掲載。

日本国債格下げ、ヘッジファンド日本株見切りの動き(昨晩執筆)

またもや虚を突かれた。
日本市場が取引を終え、欧州市場へバトンタッチする「空白の時間帯」に、ムーディーズ日本国債格下げの報が流れた。
殆どの市場関係者は、このタイミングを想定していなかった。
早朝のNYからはヘッジファンドの狼狽気味な電話攻勢。
どうやら、日本株を当面見切り売りに走りたい様子。
再増税先送り・解散・総選挙で政権安定基盤に「不確実性」が生じていた矢先の日本国債格下げだ。
クリスマス前に、日本株ポジションは処分しておきたい心理が透ける。
格付け機関の間では「格付けの品位」がしばしば語られるが、選挙期間中の国債格下げは、「インパクト狙い」とされがちだ。
その意味で、「アベノミクスへの不信任投票」と解釈されても不思議ではないインパクトをヘッジファンドに与えたようだ。

更に、明日、日本株が急落とすれば、円高に振れるであろう、との読みが、円売りポジションの手仕舞いも誘発した。
常識的に考えれば、日本国債格下げは日本売り(株、円、国債のトリプル安)を想起するが、それは中期的なシナリオ。
短期売買のヘッジファンドにとっては、膨張した円売りポジションに不安定要因が勃発したことで、まずは円買戻しで利益を確定しておきたい心理のようだ。
しかし、これは、あくまで、短期的な思惑。
中期的には、日本国債格下げ→円売りの動きとなるだろう。

格下げ、米年金マネーの反応(今朝執筆)

日本国債格下げを受けて、昨晩はホットマネー(ヘッジファンドなど)の動きについて速報を書いた。その後、更にチャットなどで年金・大学基金などリアル・マネーも含め会話して反応を探ってみた。

まず、短期マネー組は、いったん「日本株買い・円売り」のジャパン・トレードをまき戻し、ポジションをスクエア(チャラ)にして、クリスマス休暇を迎えようとの姿勢が目立つ。
そのうえで、日本総選挙の結果を見据えつつ、クリスマス明けに、ジャパン・トレードを再開するか否か、検討するとの意向だ。

いっぽう長期マネー組だが、10.31サプライズ緩和を受けて、日本株アンダーウエイトのところが、運用配分格上げに動き始めていた。米国二位の公的年金カルスターズ(カリフォルニア州教職員退職年金基金)CIOのTOPIX買い発言が、年金特有の横並び意識を刺激していた。GDPショックに対しては、いずれ上方修正もありうる、との見方で様子見に徹していた。しかし、加えて国債格下げとなると「冷や水あびせられた感じ。正直、内部で日本株運用配分引き上げの計画書を廻しても、組織内のセンチメントを考慮すると、コンセンサスが難しい」状況になったようだ。

マネーの流れとしては、本格量的緩和導入が期待できる欧州株にシフトする傾向を感じた。
基本的には米国株中心のポートフォリオなのだが、来年2-3月には、米国債務上限法案の蒸し返しリスクも予想される。オバマ大統領と共和党のネジレ現象が危惧されるわけだ。そこで、国際分散に動くなかでの日本株から欧州株への乗り換え現象といえる。
日本国債市場の波乱は懸念されていない。
日本の債務問題は「ファミリー・イシュー=家族内の問題」と割り切っている。親の借金は、子の保有する金融資産で返済できる、というわけだ。
従って、日本売りなどの言葉は全く出てこない。
粛々とリスク分散運用を執行してゆくスタンスである。

総じて3週間前にNYで会ったときの「高揚感」が醒めた感覚は
否めなかった。心理的に格下げの影響がジワリ効いている。
総選挙の結果次第では、日本株売りで「攻めるファンドと支える日銀そして錦の御旗がGPIF」の構図となる可能性もちらつく。

以上


さて、丸の内のとある高層ビル内に夜な夜なプロのトレーダーたちが集うトレーダーズ・バーがあります。という設定のフリートーク番組「トレーダーズバー」が明日から日経CNBCでOAされます。

http://www.nikkei-cnbc.co.jp/program/special/1412_bar.html

今回は、「為替、この深遠なる世界」というちと大げさなタイトル。
植野大作三菱UFJモルガンスタンレー証券・為替ストラテジストと尾河眞樹シティーバンク為替アナリストの3人に日経の人たちが入ってトーク。収録に3時間もかかったけど、それを30分に編集して番組に。
私は酒飲まないから、画面に映る飲み物は、ごぼう茶です (笑)。
あとは全員、かなりマジに酔っぱらっていた~。
まぁ、楽しい番組だったよ。
日経CNBCも、うちの地域ケーブルには基本パックに入っているけど、見られない人も多く、残念。

2014年