豊島逸夫の手帖

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ドル円相場にデッドクロスの足音

2014年5月26日


メモリアルデイ三連休中の米国市場だが、株価が史上最高値水準にあるにもかかわらず、市場の不安感を示すVIX指数は23日に11.36と歴史的低 水準にある。11.36という数字は2013年3月以来だが、1990年からの推移でみても、VIXが10に近い水準は最安値圏である。2008年10月 24日につけた史上最高値89.53に比べると、ほぼ1/8近くのレベルだ。静かな株高といえようか。
その背景としては、やはり「量的緩和縮小」中なれど米国長期金利(10年債利回り)が依然2.5%そこそこの低水準にあることが挙げられよう。
低インフレという市場環境はリスクマネーの動きを鈍らせる。
更に、ドッドフランク法(金融改革法)により大手金融機関の自己勘定部門売買が縮小されていることも市場の流動性減少の要因となっている。行内のリスク管 理が厳格化され、トレーダーもオーバーナイト(宵越し)のポジションをキャリーできず、デイトレード(日計り)或いはアービトラージ(リスクをとらない裁 定取引)に徹する傾向が強まっている。
とはいえ、ここまで市場のボラティリティー(価格変動率)が低下すると、潜在的売買エネルギーがマグマのごとく沈殿状態にあることも事実だ。量的緩和縮小とはいえ、量的緩和は未だ続いており、過剰流動性は吸収されず徘徊している。いずれリスクマネーが再び動き出すだろう。


そこで、日本にとって気になるのは、米株価もさることながら、ドルの動きだ。
先週は、黒田日銀総裁記者会見の時点で100円台まで円高が進行したが、その後102円前後の水準まで戻している。とはいえ、トレンドとしては、円安傾向に一時の勢いは見られない。
このような市場環境で、中期的傾向として注目されることが、ドルの対円相場の200日移動平均線を50日移動平均線が下抜くデッドクロスの可能性だ。

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5月23日現在、200日移動平均線は101.2919円、50日移動平均線は102.2032円にある。その差は0.9113円。
今年1月1日時点では200日移動平均線が99.3392円、50日移動平均線が101.4722円で、その差は2.1330円。
更に1月31日時点では、100.0398円と103.5500円で3.510円にまで拡大したのが、足元では0.9113円にまで縮小しているわけだ。
かりに、この200日移動平均線と50日移動平均線がデッドクロスすると、中期的なドル安(円高傾向)を示す新たな要因となるので注意が必要だ。


なお、金市場の話題として英国当局がバークレイズに対してフィクシング(ロンドン建値)での価格操作容疑でトレーダーとバークレーズに対して制裁金 を課した、との報道が流れています。この件は、改めて詳細を書きます。一トレーダーの個人プレーですが、時節柄、フィクシング廃止となるかもしれませんの で。

2014年