2014年10月16日
NY市場15日の寄り付きで、13日大引けに続き再び「魔の1時間」が起きた。
キッカケは、9月米小売り売上高0.3%下落、NY製造業指数も悪化、そして、卸売物価指数0.1%低下という米マクロ経済指標発表であった。
僅か5分間でダウは273ドルの急落。
これを見たマネーは、米国債市場に逃避殺到。10年債の利回りは一時2%の大台を下回った。
市場には、2010年5月6日に数分で株価が1000ドル以上急落した所謂「フラッシュ・クラッシュ」の記憶が蘇る。
高頻度取引による瞬間急落により、市場参加者がリスク回避のため一斉に売買注文を引込め、市場の流動性が瞬間的に枯渇する現象だ。
その後、ダウは一時460ドル以上続落した後、終値は173ドル安まで持ち直した。
その間、外為市場も大変動。
円相場は107円台から一気に105円台前半まで円高が進み、その後、106円台攻防の展開である。
「106円台でもう一波乱起きるのがドル売りのクライマックスとなりそうだ」
14日本欄最後に書いたことが、早くも現実となった。
以上の市場波乱の要因は「4つのE」に集約される。
1)終焉(End)不安
今月でいよいよ米国量的緩和も終了する。織り込んでいたはずだが、いざ、施行日が近づくと、「量的緩和依存症」の市場は、あらためて不安感に陥る。そこに、悪い米マクロ指標が発表され、米国経済の先行き不安が増幅された。
2)ユーロ(Euro)圏経済懸念
ドイツ経済減速に加え、フランス国債も格下げ。欧州コア圏経済が揺らぎ始め、更に、15日にはギリシャ株が6.75%もの急落。同国国債利回りも7.9%まで上昇した。欧州債務危機2.0の可能性などが取り沙汰される。
3)エネルギー(Energy)価格急落
15日にWTIは80ドルの大台攻防となった。
中国・欧州の需要減退。石油輸出国機構(OPEC)は減産合意に難渋。米国シェールオイルは増産。OPEC対シェールのシェア確保のための増産競争の様相さえ見られる。原油下落は「実質減税効果」というプラス効果があるが、今の市場心理では、「世界景気不安」の象徴的現象と取られがちだ。(下値の目途については15日づけ本欄に詳述)。
4)エボラ出血熱(Ebola)不安
15日には、米国内に二人目の院内感染者が出て、しかも、飛行機搭乗していたことも判明。もし、日本でそのような事態が起こったらどうなるか。想像するだけで、米国内に拡散する不安感も、伝わってくる。旅行や外出を控える傾向などが顕在化すれば、消費への影響も無視できない。市場心理を冷やす材料となっている。
さて、今後の展開だが、15日のフラッシュ・クラッシュが、NY株とドルの売りクライマックスであった可能性を指摘しておきたい。
NY株価は、下げ幅を縮めて終わった。
ヘッジファンドのドル売りポジションも、相当量、買い手仕舞いされた。
105-6円の水準から、新規円買いのポジションに転換するほどのパラダイム・シフトは見られない。外為相場は相対評価の世界。不安をかかえる米国経済なれど、欧州・中国・日本よりは「マシ」である。とにかく、米国は先頭を切って量的緩和の出口にある。
ドル金利低下も、もっぱらヘッジファンドの米国債売りポジションの買戻しによる利回り低下によるところが大きい。雇用統計改善傾向の中で、早期利上げを見込み、米国債を売ったヘッジファンドが多かったのだ。
それ以外の米国債買いは、リスク回避のマネー「一時逃避」現象である。
市場のセンチメントが落ち着けば、次の一手は、やはりドル買いとなろう。ドル高トレンドを産んだ日米欧金融政策の「軌道のズレ」など構造要因に変わりはない。とはいえ、調整局面もこれだけ荒っぽいと、市場心理が癒え、ポジションが修復されるまでの時間はかかりそうだ。
しかし、最後に市場のトレンドを決めるのはヘッジファンドのポジションではなく、経済ファンダメンタルズである。
そして、貴金属市場では、金とプラチナの値差が縮まってきた。金市場にはリスクオフにより安全性を求めるマネーが流入した結果、1230-40ドル台まで上昇。かたや、プラチナは、欧州景況感悪化=ディーゼル車販売減少予測で売られるはずが、1250-60ドル台を維持している。さすがに、1200ドル割れまで売り込まれたのは、売られ過ぎとの反省が市場内にあるのだろう。金価格は一時1250ドル台をつける局面もあった。株安、ドル安も金買い材料として効いている。円建てでは、円相場変動以上に、ドル建て価格が動くプラチナに妙味あり。パラジウム・バブルは弾けてしまった感じ。
さて、今日の写真は、京都青蓮院裏の山の上に出来た、清水の舞台より大きい舞台。青蓮院からシャトルバスで山の上に行く。写真の背景の山は比叡山。眼下に京都近郊を一望。