豊島逸夫の手帖

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NYからレポート

2014年11月10日

ヘッジファンドに招かれ、NYに来ている。「黒田サプライズ緩和」直後に急遽依頼があり、ハード・スケジュールゆえファースト・クラスを手配してくれた。
10月31日午後1時44分以降、6円もの円安進行を主導したのは、やはりヘッジファンドだ。そして1週間以上が過ぎ、「クロダさんからの贈り物」の賞味期限も意識され始めた。既に第一波の円売り・日本株買いは手仕舞いモードに入っている。問題は次の一手。
焦点は、やはり消費再増税ありやなしや。
質疑応答では、再増税した場合の景気への影響、延期した場合の財政規律の緩みなど、おきまりの議論が活発に交わされた。
しかし、彼らの本音が出るのは、懇親会から。

元スイス銀行つながりの気のおけないメンツゆえ、一番街近くのこじゃれたバーで、核心の議論が始まった。否、ライバル同志の腹の探り合いとでもいえようか。
再増税決断直後のマーケットに、かれらはアルゴリズム取引を通して株・円の巨額注文を瞬間的に入れることになる。おそらく東京時間での発表になるので、NY市場より流動性は少なく、価格を動かしやすい環境となりそうだ。
そこで、かれらが知りたがってことは、ライバルのアルゴリズムに、どのようなキーワードが埋め込まれているか、ということだ。
具体的には、消費再増税延期となった場合、「財政規律の緩み」がインプットされていれば、それに反応して瞬時に大量の円売り注文を発動することになる。流動性が薄いと、負荷が大きくアルゴリズム画面がブラック・アウトすることもあるという。今回の消費再増税のような大きなイベントになると、円相場が2-3円円安に動いても不思議ではない。
その後、初期反応が一巡すると、市場の再吟味が始まり、徐々に相場が収斂してゆく。
しかし、相場が2-3円動くと、それが既成事実となり、新たな価格水準からのレンジに移行してしまう。

いっぽう、消費再増税延期に関するキーワードが、「景気腰折れ懸念後退」であれば、大量の日本株買い注文が発動される。
実は、この会議の直前に10月米雇用統計が発表されたのだが、その前後に1分で円相場が1円も乱高下する局面があった。115円60銭まで円安が急進行した瞬間に、114円60銭まで円高に振れたのである。

なお、この懇親会には、旧知の年金運用責任者などリアルマネー組も参加していた。彼らは、高頻度取引等には目もくれず、筆者に、成長戦略の進捗状況などを聞いてくる。会議中に、「日中首脳会談大筋合意」の報が入ってきて、一瞬ざわつく場面もあった。さっそく「センカク・ヤスクニ」問題が解決へ向けて前進するのか、について活発な議論が交わされた。年金関係者は、素直に前進と評価したい様子。要は、アンダーウエイトの日本株を格上げするために、運用計画書の書き込める材料を探しているのだ。

総じて、「クロダさんの贈り物」の賞味期限が問われ始めているが、それはホットマネーの話。リアルマネーは、じっくり賞味しつつ、その効果を吟味している。
ヘッジファンドはクロダ・トレード2.0の「急ぎばたらき」を目論み、長期マネーは「入口」をジックリ見極めている。
足元では、ウクライナ再緊迫でルーブル急落・ロシア経済危機の可能性も浮上。ギリシャ債務問題も再燃。民主党大敗でオバマ大統領
そして米国が不安定期入り、国際的求心力低下。欧米株には不安定要因も顕在化してきた。その中で、運用面では日本株買い・円売りのジャパン・トレードへの依存度が高まっている。

雇用統計後、金価格は1140ドル台から1170ドル台まで反発。
新規雇用者数が若干予測より少なかったという後講釈だが、たまった先物売りポジションの買戻しの口実に使われた感じ。年末まで、1100ドル台が続きそう。一方、南アなどの金鉱山からは、減産・閉山のニュースが出始めた。採算割れの鉱山が増えている。これは想定内の展開だ。
いずれにせよ1200ドルを割り込むと、先物市場の空中戦になるから、価格変動も大きくなる。そして生産量は減る。
いっぽう引き続き、円建てでは大きな下げにはならない。
中国の現物輸入が減少しているのは、昨年、輸入しすぎて、業界在庫を取り崩しているから。新規輸入は減る。

さて、9月についで2か月ぶりのNY。
寒い!!朝1度、昼でも10度。風もけっこう強く吹くので、体感温度はもっと低い。来週は、大寒波来襲とか。
でも、マーケットはホット。
滞在中のホテルの真ん前に、なんと京都寺町通りのお茶本舗「一保堂」NY店があった。肉ばかり食べていると、ホッとするね。
ちなみに、NYでも、ごぼう茶持参でとおしてます(笑)。
ローソンの草大福と、歌舞伎揚げもスーツケースに入れて。
自家製お稲荷さんと一緒に、朝食がわりに、ホテルの部屋で食べてる。

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2014年