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米国では富裕層より低所得者層に人気の「金」

2014年4月22日


ギャッラップ社の最新米国人投資家調査が発表された。その結果が非常に興味深い。
まず、調査結果を以下にまとめた。


1)ベストと思う長期投資は(%)?

2011 2012 2013 2014
不動産 19 20 25 30
18 19 22 24
34 28 25 24
預金CD* 14 19 16 14
債券 10 8 9 6

*CDは譲渡性預金


2)年収別の内訳(%)

不動産 株・投信 預金CD 債券
75000ドル以上 38 30 18 7 7
30000から74999ドル 26 25 26 16 6
30000ドル以下 28 13 31 17 7


3)年齢別の内訳(%)

不動産 株・投信 預金CD 債券
18ー29歳 25 24 21 23 7
30ー49歳 34 23 21 14 6
50ー64歳 30 23 28 10 6
64歳以上 31 28 23 7 8

*2014年4月3-6日に行われた電話調査。米国内に居住する1026人対象(ランダム・サンプリング)。


まず、日本人投資家と比較すると長期投資として預金・債券の比率が非常に低いことが目を引く。米国では「貯蓄から投資へ」リスクマネーが大きく流れていることが鮮明だ。
不動産の人気が最も高く、ここ4年の推移を見ても上昇傾向にある。不動産市場回復が背景と見られる。
株式の人気も上昇傾向だが、不動産より下位に甘んじているのは、株価のボラティリティー(変動)によるとギャロップ社は分析している。
金が上位にきているのも日本人の感覚では意外感がある。但し、2011年に史上最高値をつけて以来、大幅に下がったので、傾向としては減少傾向だ。それでも24%というのは、金市場から見てもサプライズである。


債券はギャロップ社によれば「調査開始以来、常に最も不人気」だ。対して、預金はリーマンショックの2008年9月時点では最も人気が高かったという。
次に、所得別に見ると、高所得者は不動産と株・投信を好み、低所得者は金を選好する。後者も意外感があるが、米国ではイーグル金貨や金ETFが人気なので、なるほどとも思う。


株・不動産の保有率は富裕層・中産階級で高く、低所得者で低い。
年齢層で見ると、預金・CDの人気が若年層に高く、シニア層には低いことが興味深い。ギャロップ社は「若者たちは不動産・株式市場が乱高下する時代に育ったので預金を選好する」のであろうと分析している。対して、シニア層はリスクをとることに慣れている。


なお、共同通信社グループのアジア8か国800人(30-40代既婚男性)を対象とした資産運用調査があるのだが、その結果では、日本人、中国人、インド人には預金選好が強い。(対象が限定されるので単純に米国と比較はできないが)。
「効果があるとおもう資産運用は何か」(上位3つ回答、1位=3ポイント、2位=2ポイント、3位=1ポイント)の回答をポイント数で比較すると以下の通りだ。


日本 中国 インド
普通預金 88 72 149
定期預金 131 141 131
外貨預金 33 14 6
株式投資 113 125 34
投資信託 58 63 54
金投資 30 41 95
FX 36 8 9
不動産取引 27 86 113
先物取引 6 22 7

(2014年2月実施、共同通信社グループ、エヌ・エヌ・エーによる)


中国の金投資が少ない気がするが、それでも年間1000トン以上を購入しているのだから、この調査データに示された数字が増えれば、1000トンを更に上回る需要になるだろう。インドはやはり金投資が強い。


なお、筆者には同調査の「あなたの世帯の家計は誰が管理しているか(%)」の結果が興味深かった。

自分自身 配偶者 二人共同で
日本 32 50 17
中国 49 12 37
インド 67 5 24
先物取引 6 22 7

この分析は読者の想像に任せる。


さて、プラチナとパラジウムが大きく下げてプラチナは1400ドル割れ、パラジウムも20ドル以上下げて780ドル前後。
南アストライキに解決に向けての進展が見られたから。
いつも書いているように、相変わらず、ストライキで買われ、ストライキ終結の兆しで売られ、単純な市場です。

2014年