豊島逸夫の手帖

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「債券バブル」なのか、ギリシャ買い

2014年5月15日

ギリシャ国債が買われている。
危機的状況のときには30%を超えていた10年債利回りが、14日には6.31%にまで下落している。
財政破たんした国に、10年間年率6%強でカネを貸す投資行動は理解しがたい。
しかし、ヘッジファンドの一部は30%の時点から買いに入り、勢い(モメンタム)に乗っている。4月の5年債の新発債入札(ギリシャの債券市場復帰)には1兆円相当の応札があり、5.25%で決まった。
10年の長期はさすがにためらわれても、5年の期間ならEU/ECBが、ユーロ崩壊のリスクをはらむデフォルトを容認することもあるまい、との読みであろう。
ちなみに南欧国債(10年債)の年初からの利回り下落を比較してみるとギリシャ国債は8%台から6%台。イタリアは4%台から2.91%(14日)。スペインも4%台から2.86%。ポルトガルも6%台から3.51%と軒並み買われている。


一方、米国10年債の利回りが、14日には当面のレンジ下限とされる2.5%に接近。足元では2.54%まで下がってきた。しかも、4月米卸売物価指数(PPI)が12年9月以来最大の伸び(前月比0.6%上昇)と発表された当日のことである。
(なお、本日(15日)には消費者物価指数(CPI)発表が控えている。)
イエレンFRBの緩和継続姿勢と米国経済成長鈍化に対する懸念が、一回の物価指標で変わることはないようだ。


グローバルにマネーのフローを見れば、グレート・ローテーション(債券から株へのマネーシフト)の逆流が発生している。
欧米の物価水準は中央銀行の目標値を遥かに下回るディスインフレ状況が続き、金融当局は緩和バイアスを強めざるを得ない。
ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、遂に「来月にも行動を起こす可能性」とこれまでにない具体的表現で踏み込んだ追加緩和を示唆した。
そこで、市場には「ついに欧州の量的緩和か」との観測が強まっている。これまで量的緩和に抵抗してきたドイツからも、ユーロ圏景気への配慮から「やむを得ず」とのニュアンスも流れる。
中国でも、不動産市況が落ち込むなかで、中国人民銀行にも、緩和・人民元安バイアスが見られる。4月の同国消費者物価上昇率は1.8%と1年半ぶりの低水準と、ディスインフレ傾向が顕著だ。


米国債券市場では、年初、市場参加者のほぼ全員が、量的緩和縮小の2014年は、米国債売りの年として、利回り予測も3%超えは確実と見ていた。特 に多くのヘッジファンドは米国債売りに走った。その巻き戻しが今や起こりつつあり、更に買い手仕舞いが続くと、2.5%のレンジ下限をブレークする局面さ え考えられる。


結果的には同じ10年カネを貸すのに、米国の利率は2.54%、イタリアが2.91%、スペインが2.86%となっている。
国力の差を考えると、利回りの異常な接近と言わざるを得ない。
世界的な投資家のあくなきイールドの追求がもたらした現象で、「債券バブル」の匂いはぬぐえない。
新興国から流出した巨額のマネーが、米国株へ回帰して米国株式史上最高値をもたらし、その高値警戒感から、分散が始まった。
これといった決定打はないから、南欧国債、渦中のルーブル、新興国通貨、金などを「循環物色」している。
南欧国債やルーブルに行くくらいなら、日本株に来ても不思議はないと思う。徘徊するマネーの流れに注目したい。
日本の1-3月期GDP年率5.9%増との材料も、「日銀の追加緩和遠のく」との観測から円高要因になることがネックではある。世界的に中央銀行の緩和姿勢が市場の趨勢を左右する状況に日本も巻き込まれている。

2014年