豊島逸夫の手帖

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グリーンスパン氏の講演料は金?

2014年12月3日

私の最初の著書「金を通して世界を読む」(日経出版)の冒頭に、首題の見出しで、元FRB議長グリーンスパン氏が、講演料をドルではなく金で受領希望したというエピソードを紹介しました。18年間、通貨(ドル)の番人として、米経済に君臨して、その表も裏も知り尽くした人物が、ドルの代替通貨と言われる金を所望したことは示唆に富むと書きました。

そんな私が「我が意を得たり!」と思うような記事がフィナンシャル・タイムズに載りました。
書いたのは、同紙の名物コラムニスト、ジリアン・テット女史。
最近、グリーンスパン氏との1時間ステージ対談したときに、「金はプレミア通貨だ」と語ったことに強く共感したという内容です。

グリーンスパン氏曰く

「リターンも生まず、保管や保険のコストはかかる金という資産を各国の中央銀行はなぜ保有するのか?それは金が通貨だから。それも、どうみても、プレミア通貨だ。ドルなどの発行通貨ではない。」

「量的緩和という壮大な金融政策の実験からの出口では、マーケットは大荒れになる。それが心配だから、金を保有する、という人たちに同情する。」

という発言を受けて、同女史は「ドルという法定通貨の番人として長くFRB議長の立場にいた彼が、ドルの対極にある金を魅力的な投資手段と考えること自体、凄いことだ」と書いています。
更に、「金も法定通貨も、その価値は「幻想」かもしれない。しかし、金は、有形で有限でカタチがはっきりしている。全てが、バーチャルになりがちな現代において、これはパワフルなことではないか。」とも書いています。
英国人のコラムニストは、なにごとも斜に構えて、金などは馬鹿にする傾向が強いだけに、彼女の今回の記事は目立ちます。

これは他人事ではありません。
黒田日銀の量的緩和も、異次元のばら撒きは簡単なれど、後始末をどうするの、という素朴なギモンは残ります。その素朴なギモンを最も強く感じているのが、私の知り合いのなかでも、元日銀マンであり、元財務官僚なのです。そして金好きが多いわけです。

さて、今日の写真は、昨日、事務所のバルコニーから見た夕方の光景。東京タワーと富士山。反対側にはスカイツリー。正面には丸の内のビル街が見えて、これだけで東京見物になるスポット(笑)。

事務所のバルコニーから見た夕方の光景事務所のバルコニーから見た夕方の光景事務所のバルコニーから見た夕方の光景

2014年