豊島逸夫の手帖

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APECで展開される「恋のさやあて」

2014年11月11日

NY市場では、APEC関連で日中首脳会談よりオバマ・プーチン「立ち話」が注目されている。米露関係は、ゴルバチョフ氏が、「冷戦の再来」と憂うほどに悪化しているからだ。
9月の国連総会では、オバマ大統領が、エボラ出血熱・イスラム国とロシアを同列に「悪の枢軸」のごとく非難した。「ロシアの欧州における攻撃的姿勢は、領土拡大のため大国が小国を踏みにじる時代を想起させる」と述べたのだ。
プーチン大統領も黙っていない。10月、ソチでの国際会議で、ウクライナ問題について「我々が始めたことではない。冷戦が終わっても、米国は自らを勝者と宣言して、都合よく世界を変えようとしている」と非難。「これは、成り金と同じ行動だ。富を賢く管理するのではなく、多くの愚かな事をしている。」とまでこき下ろした。
今回のAPECに際しても、見せつけるかのように中国接近の姿勢を強調している。西シベリア地区の天然ガスを中国へ供給する協定に署名。APECでも習近平主席が、満面の笑みでプーチン氏と握手する映像が流れた。
日中、米露、中露そして日露、中韓。
それぞれの思惑を持つ国々の指導者たちが、外交的駆け引きを「恋のさやあて」のごとく演じている。

ときあたかも、マーケットは2015年のシナリオを語る時期だが、NY市場では、引き続き「地政学的要因」のイベント・リスクが注目材料だ。
株式市場では、民主党中間選挙敗北後のオバマ大統領に「外交的に余計なこと」をしてほしくない、という本音が透ける。既に史上最高値圏にある米株価が、2016年大統領選挙までの不安定期の2年を乗り切れるか、身構えている。
外為市場では、米国一人勝ちのドル高トレンドが、どこまで継続するかが問われる。限定的とはいえ、イラクへ派遣の米軍を倍増。来年早々には、政府債務上限引き上げ問題も再浮上必至だ。ドル高なれど、ドル不安は消えない。
債券市場では、米国債最大保有国の中国に、「人質」を取られている感覚が付きまとう。外交上の駆け引きに、米国債が使われるリスクを懸念する。
商品市場では、なんといっても原油価格がどこまで下げるか。最も意見が分かれるところが、シェール・オイルの生産コストだ。まだ開発初期段階ゆえ、平均的生産コスト水準が定まらない。そこにサウジアラビアが安値販売競争で揺さぶりをかけてくると、米国の原油生産量も予測が難しくなる。

結局、2015年の米国経済予測では、利上げの有無・開始時期が最大の変動要因とされるが、「イベント・リスクにより、上振れ・下振れが生じる」との但し書きつきだ。
そこで、地政学的要因を先読みして動く金価格は、先行指標としてフォローされる。(有事の金と騒がれる頃には、プロは利益確定売りに走るものだ。)一方、恐怖指数といわれるVIXは、足元の市場における不安心理を計るバロメーターなので、この両者への目配りが欠かせない。

この原稿はNY滞在中のホテルで書いています。今は便利な時代で、日経電子版の紙面ビューで、日本時間朝4時から、朝刊紙面を読めます。商品面に私の金価格見通しが出ていました。中期展望なので、先週東京でのインタビューです。このインタビューの日時を決める時点では、まだ私は弱気だったのです。ところが先週1130ドル台まで一時下げたところで、強気に転じた次第。来年はじめまでは、まだ1100ドル台が続くという読みですが、底値圏での短期的乱高下と見ます。利上げ時期が明確になる時点で売りクライマックスとの見立て。プラチナのほうが面白いというのが持論ですが、今回は「金限定」でした。

ドル円は昨日113円台まで円高に振れましたが、結局114円80銭台で戻ってきましたね。ただ、今週は、大きな材料がないlight week(軽い週)なので、ファンドの利益確定円買いが出やすいと感じます。

NYの気候は日中15度程度まで上がってきましたが、米国北部は記録的初大雪。アラスカから、巨大な寒波が今週末にかけて全米を覆うそうで、ニューヨーカーも、手袋や襟巻をそろそろ持ち出しています。
いま、食べたいもの。セブンイレブンのおでん!

2014年