豊島逸夫の手帖

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連休中の欧米市場、波乱にご用心

2014年4月28日


オバマ大統領アジア歴訪は市場で特に材料視されていない。
米国主要メディアも事前に「具体的成果としてブレイクスルー(画期的出来事)はないであろう」と報道していた。引きこもり気味の米国国内感情への配慮からアジア重視の姿勢が後退するのでは、とのアジア側の懸念を和らげる外遊とされた。
外交上の軸足(ピボット)を中東からアジアへ移す政治的「リバランス」を確認し、ムードを盛り上げるモメンタム効果を狙うことが主目的とされているのだ。


TPPもワシントンでの閣僚レベル交渉で決着できなかった時点で、ニューヨーク市場は、「首脳レベルで政治決着できるほど容易なアジェンダ(議題)ではない」と割り切っていた。
従って、失望感も薄い。
それより足元ではウクライナ情勢のほうが喫緊のアジェンダという認識が明らかに強い。
常に大統領にピッタリ付いて、発言の「お目付け役」を果たしているスーザン・ライス大統領補佐官も、事前に「今回のアジア訪問には大きなサミットが含まれず」と抑え気味ともとれるコメントを発している。
「日米、幻のサシ会談」と27日日経朝刊で報じられたように、銀座の「スシ・サミット」でも、オバマ大統領が常にライス氏の目を見ながらの首脳対話となった。ライス氏も鮨屋のカウンターで刻々変わるウクライナ情勢を携帯ネットで追っていたのかもしれない。
「前進の道筋を特定」という解釈が難解な表現も「レトリック(巧みな表現)」にたけた大統領と言われるオバマ氏らしい。
苦肉の言い回しでTPP重視の姿勢を共同声明ににじませた。


しかし、経済問題より外交問題の優先順位のほうが高いことは明らか。
中東では、イランとの核関連交渉もあくまで「暫定」の合意だ。シリアでは柔道の得意なプーチン氏に先手を許し、外交上見事に一本とられている。しかも、外 交上のピボットをアジアに移したことで「アジアを徘徊するオバマ」と現地紙は報じている。そこで例えば対イスラエル向けメッセージとしては「イスラエルは 大切な同盟国」と謳いあげている。
欧州では、ウクライナ緊迫のこの時期に、キエフには副大統領を派遣し、自らはアジアを訪問している場合か、との反応もくすぶる。
米国内は中間選挙を控え内政問題山積みで、支持率も低下中。ここでも「アジア外遊している場合か」との「ひっこみ国民感情」が根強い。
このような状況下で、オバマ大統領の本音は、TPPの政策優先順位がトップというわけにもゆかない、ということだろう。
とはいえ、アジア訪問先への「おみやげ」はしっかり用意していた。
日本には「尖閣諸島は日米安全保障の適用内」との正式確認発言。
韓国には慰安婦問題に言及しての、甚だしい人権侵害との発言。


総じて、アジアにくすぶる米国不安感を安堵させる初期の目的はおおむね達しているようだ。
市場は、オバマアジア歴訪を傍観しつつ、心は今週並ぶFOMC,イエレン講演、米国GDPそして雇用統計に集中している。
日本の連休中に欧米市場が大きく変動して、連休明けの市場の景色が変わっていることは、しばしば経験することだが、今年は、米国の市場カレンダーの並びが波乱を予感させる。
特に足元で膠着の極みに達しているドル円相場がブレークする可能性に注目したい。


例えば、イエレン発言が市場を動かす可能性がある。
初の記者会見で「量的緩和終了から利上げまで6ヶ月くらいかも」と口をすべらせたタカ派的発言を、その後、「緩和継続」とのハト派的発言で「中和」させた。
中央銀行にはデュアル・マンデートと呼ばれる二つの政策目標が常に課されている。物価安定と経済成長だ。この両者を同時に満たすことは誰が中央銀行のトップになっても至難の業なので、常に金融政策は綱渡りを強いられる。
その立場からは、市場が「イエレン氏、緩和継続」を当て込み、過度のリスクオンに走るようでも困る。そこで、若干のタカ派的釘刺し発言があっても不思議はない。
オバマ外交はウクライナ緊迫の渦中で中東からアジアへのリバランスに揺れ、イエレンFRBは過度の緩和期待のリバランスによりバブル予防線を張ることも考えねばならぬ。
オバマの対露経済制裁の強硬発言による米ロ緊張と、イエレンの「緩和継続」期待をけん制する発言が重なると思わぬ円高が進行して100円台攻防のリスクも念頭に置くべきだろう。


さて、金価格はウクライナ情勢緊迫で再び1300ドル越え。
ウクライナが下支え要因になっているね。
普通は有事の金要因は、急騰急落のパターンなのだけど、
米ロ冷戦リスクやロシア経済悪化のリスクを孕むので
今回は長期化によりジワリ下値サポートになっている。
ウクライナなかりせば1250ドルでもまったく不思議はない。


今日の添付写真は、事務所のテラスで打ち合わせがあったときにコモディティー関連のスペシャリスト大橋ひろこさんが持って来てくれたパン。今、人気のパン屋さん「築地折峰」の可愛らしいパン・セット。眼下に見えるのが勝鬨橋の下をくぐる隅田川観光船。

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今は気候も暖かく外が気持ち良いので打ち合わせ・取材などは外のテラスにしている。但し、なかには高所恐怖症の人が意外に多く(10人に一人くらいは、テラスに出た瞬間に腰が引けている)、その場合はイン・ドアで。


なお、日経マネー最新号連載コラム「豊島逸夫の世界経済深層真理」は「知識だけでは成功はおぼつかない」
日経ヴェリタス今週号の「逸's OK!」は「アジアで進むダイバーシティ」


私の連休はまず、ガーラ湯沢のスキー撤退作業。
(今シーズンは朝6時の新幹線、帰りは昼12時の新幹線という
半日スキーを41回やった。午後からNY時間まで仕事というパターン。これだけやると、生活の一部、ルーティーンになるね。)
それから連休は福島の高原で、友人たちとゴルフ&読書。桜満開の季節だ。

2014年