豊島逸夫の手帖

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ロシア軍ウクライナ侵攻の切迫感強まる

2014年8月12日

日本のお盆期間中にもロシア軍ウクライナ侵攻の切迫感が強まっている。
天王山の戦いともいえる「ドネツク決戦」が現実味を帯びてきたからだ。
人口百万をこえるウクライナ東部の中心都市ドネツクは、既に食糧・武器等補給のルートを絶たれている。特に、よりロシア国境に近い都市ルハンスクとドネツクを結ぶ道路が、ウクライナ政府軍により遮断されたことで、親ロ派への武器供給が止まった。
昨日本欄でも指摘したが、同政府軍はドネツクに接近しつつある。
天王山の戦いともいえる「ドネツク決戦」が臨戦態勢に入っているのだ。
既に、同政府軍はドネツクとルハンスク市民に「避難勧告」を出した。


並行して、国際赤十字による救援部隊派遣が、ウクライナ政府、EU,そしてロシア参加の条件で進行中だ。
しかし、プーチン大統領の画策する「人道的見地からのロシア系ウクライナ市民への救済」が、この程度で終わるか否かは全くの未知数。
既に、NATO発表で2万人、ウクライナ政府発表で4万5千人のロシア軍がウクライナ国境付近に集結との報道が流れ、NATOは「ロシアの軍事介入の可能性高まる」との認識を示している。
このままドネツク支配を巡る戦いでウクライナ政府軍の優勢が決定的となれば、ロシア軍による「人道的見地からのロシア系住民救済作戦」の可能性が強まるだろう。
仮にドネツクがウクライナ政府軍により奪還される事態になり、ロシア側がただ傍観すれば、プーチン大統領の沽券に係わるからだ。


ここで事態を収束する役割を果たすことができる人物は、メルケル独首相をおいて考えられない。しかし、独ロ関係も変質しつつある。
伝統的に密接な経済関係を維持してきた両国だが、ここにきて、メルケル首相は、EUによる対ロ制裁に協調・参加した。これはプーチン大統領にとっては誤算だったであろう。メルケル首相のロシア離れの背景には、マレーシア航空機撃墜を機に独国民の反ロ感情の高まりが世論調査で顕在化している事実がある。


益々孤立化するプーチン大統領に残された手段は極めて少ない。

2014年