2014年12月5日
昨晩、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の記者会見が始まるや、ドル円相場は大荒れとなった。
まず記者会見直前までは、119円90銭台の水準で推移。
しかし、記者団との質疑応答が開始後、瞬間的に120円20銭前後の円安に振れた直後、119円40銭前後まで円高に転じた。
まさにヨーヨーのごとき変動で、結局119円70銭―90銭のレンジに収斂していった。
記者会見前に比し、若干、ドル安・円高となっているのだ。
いっぽう、欧米市場で最も取引量が多いドル・ユーロ相場は、会見開始後、瞬間的に1.2300の大台を割り込むユーロ安・ドル高に振れたが、その後、1.2440前後までユーロ高・ドル安になった。結局、1.2380水準と会見前に比し明らかにユーロ高・ドル安に収斂している。
以上を総合すると、外為市場では、ドラギ発言が「量的緩和を明示せず」と解釈され、失望感からユーロと円が買われたのだ。
筆者も、記者会見は一部始終をネット中継で見ていたが、注目すべき発言が3か所あった。
まず「来年の早い時期に、追加的かつ非伝統的な政策を準備する」とのくだり。明らかに、国債購入型の本格量的緩和示唆と読める。但し、記者からの「早い=early」とは、(次回のECB理事会の)1月ということか、との質問に、「earlyはearlyだ。時期を特定しているわけではない。」との趣旨の答えがあった。ここが、「量的緩和開始時期は1-3月と、ややあいまい」との解釈になったのだ。
次に「この方針は全会一致か」との問いに、「NO」と答え、「金融政策決定に全会一致の必要はない」とした。これが、「やはりドイツは反対か」との連想を生んだのだ。
更に、ECBのバランスシートを1兆ユーロほど増加させる方針に関しては、これまでの「期待する=expect」から「意図する=intend」の表現に変えた。
以上を総合すると、ドラギ発言は、本格量的緩和につき従来より踏み込んだトーンで語ったが、具体的な方法・時期などは明示しなかった。
明確に語ったのは、経済成長率とインフレ率の見通しを下方修正、そして原油急落の影響は、この見通しに含まれていないこと、である。ここでは、経済環境から見れば、本格量的緩和やむなし、との判断がにじむ。
かくのごとく、すぐには判断できない発言だったので、市場は英文解釈に手間取り、大きく揺れたのだ。
円相場が瞬間的に120円20銭水準をつけたのは、オプションがらみのストップロス(損切り)の影響と思われる。大台突破の過程では頻繁にみられる現象だ。
かくして、市場は本格的120円台入りを、今夜の米雇用統計に託すかたちになった。
早晩120円台に本格突入しようが、筆者が想定していたより多くのデリバティブ取引が120円にはバリアのごとく張り巡らされていたようだ。
中期的には125円を目指し円安が続くと読む。
そして為替120円と日経平均18000円はセットであろう。