豊島逸夫の手帖

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先手取ったプーチン、日米欧は受け身の対応

2014年9月4日


ウクライナ停戦大筋合意を、プーチン大統領得意の柔道にたとえれば、対戦相手のオバマ大統領に「効果」あるいは「有効」のポイントを取ったといえる。
オバマ氏は、ロシアに圧力をかけるため、3日にはエストニアを訪問。バルト三国首脳と会談して、黒海を含め同地域での軍事支援を強化すると言明。同地で演説するオバマ氏の視線は明らかにモスクワに向いていた。
そして、4-5日には、英国に飛び、北大西洋条約機構(NATO)で、ロシアを念頭に置いた同盟の「決起集会」に臨む。ロシアへの外交的配慮をかなぐり捨て、東欧の軍事施設の積極活用にも踏み切る構えだ。


このオバマ選手からの技の仕掛けタイミングを見計らったかのようにプーチン選手は、素早く反撃の技で体勢を入れ替えた。
「ポロシェンコ・ウクライナ大統領との停戦電撃合意」の隠し技は、ジャッジが思わず「有効」とコールするように決まった。
当のプーチン氏はモンゴル訪問中なのだが、モスクワからの機上で、「船中八策」のごとく7項目にわたる停戦案をまとめていたのだ。
振り返れば、シリアでは、米軍軍事介入直前に、プーチン氏がアサド大統領を「外交的解決」に導く「白馬の騎士」役を演じ、オバマ氏から「有効」ポイントを奪った。
そして、今回は、オバマ氏が欧州に出張り、「白馬の騎士」役を演じようと動いたところで、その出鼻をくじくような電撃発表に及んだのだ。
オバマ氏は「この停戦合意の本気度はまだ未知数」とのコメントで劣勢立て直しを図る。


なお、停戦合意発表に際しては、混乱が見られた。
3日の日本時間夕刻に、まずポロシェンコ大統領が「恒久的停戦に合意」と発表。
次に、ロシア側のスポークスマンは「合意に至っていない」と否定。そこで、ウクライナ側は「恒久的停戦のレジーム(体制)につき合意」と修正発言。
そしてトリとして登場のプーチン氏は、モンゴルで記者団におもむろに「7項目の停戦案」を披露したのだ。


市場は振り回された。
当初は、すわ恒久的停戦、これでリスクオンとの反応。ロシア株・ルーブル・欧州株・ユーロが上昇。「有事の金」は「停戦」のキーワードがアルゴリズム取引の売りを発動させ、一気に急落。
しかし、停戦合意は確認できず、との報道で、一転リスクオフ。
最終的には、プーチン氏の7項目停戦案提示で、市場には、とりあえず安心感が流れた。
とはいえ、まだ市場は疑心暗鬼。
もつれた現状からの出口戦略の実現性を計りかねている。


「停戦合意」の報道を引け後、夕方に受けた東京市場は、安倍改造内閣の市場へのインパクトを推し量っていた最中だった。
円相場は105円台で円安が一瞬進んだが、次の瞬間には105円の大台を割り込んでいた。
まさに、新体制への期待感に水をさすような展開。
ついに、ウラジーミルからシンゾウへの祝辞は聞かれなかった。


対照的に、相次ぎエネルギー共同開発プロジェクトを立ち上げ、接近中のロシアと中国の関係深化がいやがうえにも目立つ。
冷戦以来、最大の危機といわれるほどに、こじれたロシアと欧米の関係ゆえ、仮に停戦合意しても、関係の修復には時間がかかろう。
日本への影響も、市場では逃避通貨としての円売買、政治的には中国とロシアの接近を通じて、ボディーブローのごとくジワリ効いてきそうだ。


金価格は、そういうわけで、1260-1270ドル台で乱高下を演じた。第一報では、ストンと10ドル下がった。
その後1270ドル台回復。ジワリ、相場水準が下がりつつあり、そろそろ買い場探しの局面に近づく。


さて、昨日は関西出張。
そうくれば、夜は当然京都に寄って、おなじみ祇園の「らく山」へ。
写真は季節の鱧。
今年は不漁らしい。なのに、非常に大ぶりの鱧を仕入れてくれた。
写真1は大将の名人技。鱧の骨切りの術。


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包丁だけがサクサクと小気味よい音たてて
鱧の骨を切ってゆく。暑い夏でも、この音きくとさわやかな気分になれる。
写真2は、その大型はもを串に刺して、丁寧な温度加減の調整でいい塩梅に焼いたところ。


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この熱の通し方に料理人の差が出るのだ。
そしてカウンターに供される(写真3)。


1686a.jpg

鱧ばっかりは、関東は比較にならないね。
ホンモノの鱧を知ってしまうと、東京で鱧を食する気にはなれない。似て非なるものとしかいいようがない。
とてもとても幸せなひとときでした。
(その間も、ウクライナ情勢はカウンターに置いたタブレットで常時フォローしていたけどね 笑、こればっかりは職業上しょうがない)
最近、このブログ読者の方々の訪問が更に増えているらしいよ。まぁ、私も自信もってお奨めできるね。
新しい料理屋も開拓中なので、またご紹介しましょう。

2014年