豊島逸夫の手帖

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中国共産党は世界最大の「商工会議所」

2014年2月6日


中国の経営者と名刺交換すると、社長の肩書の下に、「党書記」などのタイトルが誇らしげに併記されている。
中国共産党の幹部職に就くと、個人的ネットワークが拡大して、ビジネスチャンスも増える。中国では党が「商工会議所」の役割を果たしているとも言えようか。
更に、党からの「天下り」組が、民間の要職に就くことも多い。党への貢献度に報いるための「恩賞」である。
筆者は、2002年から中国の取引所や商業銀行のアドバイザリーを務めてきたが、取引所のトップ以下3名程度は、例外なく「党からの天下り組」で経済感覚が希薄な人たちであった。銀行の頭取室には、国家主席の大きな写真と中国国旗が飾られていた。
国営企業のトップも同様である。
その結果、資金融資先も、「商工会議所」の上席会員たちが優先され、民間企業への間接金融ルートは細かった。


そこで、自然発生的に誕生したのが、「影の銀行」なる存在である。ノンバンクとヘッジファンドが一緒になったような組織といえようか。
「商工会議所」のネットワーキングから外れた人たちには、貴重な「金融機関」として定着した。
その「影の銀行」の有力な資金源として育ったのが「理財商品」である。
この件は、日経コラム1月29日付「理財商品の秩序あるデフォルト模索する中国政府」に詳述した。
要は、中国政府は理財商品のデフォルトかバブルか、の厳しい選択を迫られているのだ。
今回、「天の声」により瀬戸際で救済された「誠至金開1号」という理財商品は氷山の一角に過ぎない。


今後も同様の救済を続ければ「モラル・ハザード」に陥るは必至だ。
中国には「鶏を殺して猿を脅す」という言い回しがある。見せしめのために厳しく戒めることの例えである。早晩、「理財商品」のリスクを中国人投資家に思い知らさねばならぬ。
もし、この「痛み」を回避して、理財商品を放置すれば、「影の銀行」経由のマネー・フローがバブルの誘因となる。
現実的なシナリオとしては、「事前調整型」のデフォルトによる理財商品の安楽死を模索することになろう。
同時に、「影の銀行」に代わり、債券市場を育成することが必要だ。
理財商品を、ハイイールドのジャンク債に衣替えすることである。
この構造改革は容易なことではない。
過渡期には、市場に混乱が生じる事態もあろう。
新指導部の目指す「量から質」路線が避けて通れないプロセスでもある。


さて、昨日は、シティーバンク、シニアFXアナリスト、尾河眞樹さんと対談しました。現在,制作進行中の恒例ジェフ・ムック用です。毎回好評につき、今回は、なんと10ページもとりました。
外為ディーラー心理から、アルゴリズム全盛の市場の実態、そして、円・ドル・ユーロ・新興国通貨の見通しまで濃い対談でした。
果たして10ページでも足りるかな。。。

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今日は、亀井幸一郎・池水雄一と3人で金対談です。
これも楽しそう。
ただ、紙媒体だと、出版日までに、相場の景色が変わるリスクがあるけどね。それはそれで、しょうがない。要は、プロの思考プロセスが伝わればいいと思ってます。

2014年