豊島逸夫の手帖

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ユニクロ値上げで、お父さんの給料が上がるかも。

2014年6月24日

きょうはビギナー向け原稿です。

先日欧州出張に行ったのですが、現地の新聞記事で、ちょっと驚いたことが「ユニクロ値上げ」という記事が一面に載っていたことです。

今やユニクロも世界ブランドになったか、という感じでしたね。

さて、この値上げは、家計には「良くない」ニュースですが、日本経済にとっては、「良いニュース」となる可能性を秘めています。

お父さんの給料が上がるキッカケになるかもしれないのですよ。

まず、事実関係から整理してみましょう。

ユニクロは8月以降に売り出す商品の価格を5%前後上げると発表しました。

セーターは税別1896円を1990円に、Tシャツは943円を990円に、そして2848円のジーンズは2990円に値上げされます。

なお、「8月以降に売り出す商品」ということは、つまり新商品の価格ということです。「8月以前から売られていた商品」は売り切ってしまうのでしょう。(ヒョッとして在庫処分セールやるかな?)

そして、値上げの理由ですが、まずは「円安」。

ユニクロの衣料の多くは海外製。しかも、衣料の原材料も値上りしています。いよいよ「円安」のコストアップ効果がユニクロにまで波及して、そのツケを消費者に転嫁せざるを得なくなったのですね。

それでも、ユニクロは「勝ち組」で、ブランドも確立されています。消費税増税以降も既存店売上高はプラスを維持しています。ですから、強気の姿勢で自社製品の値上げ、原材料高の消費者への転嫁が出来るのですね。

そして、ここからが実は今日一番考えて欲しい点なのですが、もう一つの理由が、国内約850の店舗に勤めるパートタイマーやアルバイト社員約3万人の中から1万6千人を正社員化することを決めたことなのです。

この決定は、会社側から見れば、店舗販売のコストアップ要因になりますよね。

正社員待遇を増やす。でも、それにはおカネがかかるから、その分の一部はお客さんに負担してもらおう、というわけです。

ここまで考えてみて、皆さんはどう思いますか。

それならしょうがない、とか、いやいや、まずは上層部の高給取りの給料を減らせ、とか色々な意見があるでしょう。

でも、実は、この給料アップ→価格アップという「良い経済の循環」こそがアベノミクスが目指していることなのですよ。

デフレの時代には、給料ダウン→モノが売れなくなる(消費者が買わなくなる)→安売り競争になる→会社の収入も減り、更にリストラに追い込まれる、という「負の連鎖」が起こりました。

それが、パートを正社員化することで給料アップ→価格アップ→会社も経営が安定化して、リストラもなくなる、という「正の連鎖」に変わりつつあるわけです。

勿論、このような例は、未だ、ユニクロのような大手だけで、中小企業には未だデフレの悪影響が強く残っています。給料・ボーナスアップなど、まだ先の話、という会社も多いのです。

とはいえ、景気が良くなっていく過程では、まず大手がデフレから脱却して、その後で、徐々に中小にも良い波及効果が浸透してゆくものです。

ただ、ひとつ注意しなければならないことは、景気が良くなれば、物価も上がってゆくので、銀行にゼロ金利で預金しておくだけでは、家庭の蓄えも目減りしてしまうことです。

まぁ、いずれゼロ金利脱却ということになるでしょうが、それには時間がかかります。

ですから、世の中の物価が上がれば、それに連れて値が上がってゆくものを資産として保有することが大切なのです。

金プラチナも、そのひとつです。

ユニクロが値上げすることを日本経済が良くなりつつあることの兆しと捉えて、資産運用も考え直すべきときだと思います。

2014年