豊島逸夫の手帖

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最強通貨「円」狙うヘッジファンド

2014年6月30日

ヘッジファンドがドル売り・円買いに動き始めた。

市場環境は米ドル金利低位推移、イエレンFRBのハト派色(量的緩和縮小するも緩和継続は当面変わらず)によるドル安に傾いている。ドル・インデックスも足元で80の大台の攻防を続けている。

筆者は5年前から、ドル・円・ユーロの主要三通貨は、それぞれ構造的経済問題をかかえるので「弱さ比べ」と説いてきた。そして最近は、緩和色が相対的に弱い通貨が買われる傾向にある。3通貨を不等式で示すと、現状は、円>ドル>ユーロとなっており、円が「最強通貨」である。この背景については日経コラム「日銀緩和負けの円高、潮目が変わる日」(6月27日付)に詳説した。

外為市場全体で見れば、ドル・円・ユーロが低金利で売られやすく、キャリートレードの調達通貨として使われ、その一部が新興国通貨買いに廻っている。しかし、主要三通貨以外の「他通貨」の取引シェアは絶対的に小さい。

グローバルな通貨市場における流動性を検証すると、主要三通貨のシェアが42.4%を占める。対して、他通貨の中では最大の流動性を持つ豪ドルでも、対米ドルとの取引シェアは全体の6.8%に過ぎない。一方、ドル円のシェアは増加中である。

通貨別取引シェア

2010

2013

ドル・ユーロ

27.7%

24.1%

ドル・円

14.3%

18.3%

ドル・ポンド

9.1%

8.8%

米ドル・豪ドル

6.3%

6.8%

(BIB国際決済銀行が3年に一度発表する外国為替サーベイによる)

そこでヘッジファンドもアベノミクス相場が始まってから、円売り・ドル買いの取引を膨らませてきた。しかし、ここにきて、そのポジションのダブル・アップ(トレーダー用語で持ち高をひっくり返すこと。この場合は円売りから円買いへの転換。)を語るファンド筋が増えているのだ。

彼らの質問も「日銀の追加緩和はいつか」から、「日銀の追加緩和はないね」という「念押し」口調に変わってきた。

テクニカルには、ドルの対円レートが、200日移動平均線を下抜け乖離幅も30銭近く拡大中だ。「decisively決定的」にブレークしたので、早々と「円高テリトリー(局面)入り」宣言のような見方が増えている。

日本側から見て気になるのは、アベノミクス成長戦略の骨太の方針が決定されたタイミングに円高宣言されていること。今回の円高は米国発ドル売りゆえ、偶然の成り行きなのだが、結果的には、市場が「サード・アロー(三本目の矢という用語もすっかり英語化した)」に対して「円買い」のカタチで不信任投票を投じるかの如き様相になっている。結局、「成長戦略のリストの中から、ひとつでもいいから、deliver(結果を出す)の数字が見たい」という論調になるわけだ。

但し、円高の仕掛けが、テクニカル重視の短期筋なので、99円では円を売り戻す、という「急ぎばたらき」の胸算用も透けて見える。

横並び意識が強い市場、というのも彼らの日本市場観ゆえ、GPIFが動き出せば、日本株買い・円売りのベース・シナリオに沿ったポジションに再びダブル・アップして回帰してゆくだろう。

プロの視点から見ると、このタイミングで黒田日銀が「日本株ETF購入」でも匂わせれば、ビッグ・サプライズで、海外ヘッジファンドを動かせるのだが。所詮、真夏の夜の夢なのだろうか。

ヘッジファンド側も、台所は厳しいのだ。主要国低金利現象の中で、すこしでも良い「イールドの追求」に奔走している。ルーブル、新興国通貨、南欧国債、ハイイールド債、そして、値幅取りの商品売買(原油、パラジウム)など、つまみ食い的に循環物色する中での円買い、というのが実態である。金市場にも短期マネーが流入している。

今日の写真は、アユ!

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週末、大阪でセミナー講演があったので、常連読者の皆さんにはお馴染みの(笑)京都祇園の「らく山」に、旬のアユを食べに行きました。

ここの大将が「釣り名人」なので、みずから、その日に釣ったアユを、職人芸で焼き上げたのが、絶品。アユ焼いているときだけは、いっさい喋らず、黙々と集中してます。万願寺トウガラシも今が旬で、うまい!

そして、いよいよ夏を感じるのが、ハモ。

まな板の上でシャキシャキとハモの骨切りする音を聴くと、もう祇園祭の季節だな、と思うのです。

このブログ読者の来店も増えていると、おかみさんが言ってました。

典型的な水商売ゆえ、お客さんを断るほど賑わう日もあれば、閑散の日もあり、仕入れ、仕込みが難しそうだね。

相場も同様だけど(笑)。その日になってみないと分からん。

それから今朝の日経朝刊に全面使った「グラフで見る金市場」みたいな特集が載ってます。とても分かりやすいですよ。

最後に、Toshima & Associates副代表、治部れんげが、参議院会館で登壇参加した「都議会議員野次問題を考える会」についてのレポートが東洋経済オンラインに載ってます。「女はそれを我慢できない」という新連載。↓

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39701

2014年