豊島逸夫の手帖

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男子禁制セミナー・レポート

2014年4月18日


銀行勤務時代から30年以上、投資家相手のセミナーで講演してきたが、NISA導入以来、「女性限定」バージョンが増えた。OL、主婦、シニア。年齢層は多岐に亘る。しかし、共通していることは、経済投資知識欠如から生ずる不安感だ。
セミナーでの質問の例を挙げてみよう。
「投資に対するマイナスイメージがあります。払拭する考え方があれば教えてください。」
「分散投資って、どうやるの?」
「今、どのような貯蓄にしておくと一番有効なのでしょうか」
(筆者注、投資というとマイナスイメージなのだが「貯める」というと抵抗感はない。)
「積極的に増やす方法と、着実におカネを貯めるバランスについて聞きたい」
「お金の管理方法と、上手な増やし方。自分に合った投資の見分け方」
「リスク管理が苦手でこれだと思うと集中しやすいのですが、どのようにするのが本当はよいでしょうか」
(筆者注、「本当」という単語に、主催者側の「建前」ではなく「本音」が知りたい、との意識が透ける)
「先行き短い年寄りの投資はどうしたらよいか」


総じて、株、債券、外為、商品などの各論に入る前の段階で、戸惑っている様が鮮明だ。
昨晩も、女性誌読者125名相手のゴールドセミナーがあったのだが、「質問といわれても、なにを質問してよいかも分からない」女子たちが、「アベノミクス」とか「NISA」という言葉に刺激されて、とにかく何が起きているのか見聞に来た、という雰囲気であった。
(ブログ読者たちも来ていたが)
しかし、平日の夜7時に来るくらいだから、勉強意欲は旺盛。
投資セミナーにありがちな「楽して儲ける裏技は?」というようなムンムン感が皆無に近かった。進学塾のように講師の話を丁寧にノートにメモする姿が目立った。
それゆえ、筆者は、健全なスタンスだと思った。


いっぽうで、「先生」の話をこれほど素直に受け入れる人たちは、特定の商品を売るための巧妙なトークと、中立的な立場から説くトークの判別も出来ないのでは、との危うさも感じざるを得なかった。
そこで、筆者は「売買で儲けようとしても虚しい」という本音トークをぶつけることにしている。
当然、会場の後部で見守る主催者側は複雑な表情を見せる。
しかし、参加者は、「そこを具体的に聞きたかったのだ」という表情で身を乗り出す。
この業界と投資家の間の溝を埋めなければNISAの先行きも覚束ない。
儲かった場合の課税を心配する前に、リスクをとってリターンを追う胆力を養うことが先決問題であろう。
だから、筆者はまず「一回女子会で使うおカネから始めて、コツコツ損する体験をしてみろ。理屈だけでうまくゆく世界ではない。まずリスク耐性を鍛えよ」と説くことにしている。


なお、昨晩の参加女子の特徴は、ローヒール、それも外反母趾防止的な非常に実用的なもの着用。バッグは大きめ。髪の毛のカラリングも地味目、もしくはしていない。
飛びつきはしないが、確信がもてると行動の移すタイプが多かったように思えた。

1603.jpgほぼ満席で、終了まであと1時間をきったところで、あたふた入室してくる参加者もいた。

2014年