豊島逸夫の手帖

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FOMC睨み短期筋円売り加速

2014年9月9日


雇用統計をキッカケにヘッジファンドの円売りが加速している。
5日発表の米雇用統計は非農業部門新規雇用増加数が14万2千人と事前予測を大幅に下回った。外為市場の反応は、発表直後は、プログラム・トレーディングによるドル売り・円買いで、瞬間的に104円80銭を割り込んだが、直ぐに105円台へ切り返した。
ISMなど相次ぐ米マクロ経済データ好転の中で、雇用増加数だけが「異常」ともいえる低さだったので、統計的な「外れ値」と見なされたためだ。(本欄8日付け「雇用統計後の市場を読む」参照)


経済データのなかで最も影響力の強い雇用統計の悪化も無視してドルが買われ続けたことは、ドル・ブル(強気)に傾いていた通貨投機筋を奮い立たせた。
しかも、欧米市場では最も取引量の多い通貨ペアであるドル・ユーロで、ユーロが急落して1.30の大台を割り込んだことで、ドル高センチメントが支配的となった。
その背景には、ドラギ発言による欧州中央銀行(ECB)の本格量的緩和導入予測がある。


ドルインデックスも1年2か月ぶりに84.30台を突破した。
次なる最大のイベントは9月16,17日に開催されるFOMC。
イエレン氏は、ジャクソンホール講演で、「利上げが後手にまわるリスク」も「両論併記」のカタチながらも言及した。これまでは、「利上げが早すぎるリスク」を強調していただけに、タカ派へ配慮した「中立的」内容と理解された。そこで、今回のFOMC声明文では、「量的緩和終了から利上げまでの時期」について「相当期間」という表現が外される可能性がある。
加えて、欧米の論調に消費増税後の日本経済悲観論が増えてきた。安倍改造内閣も「お化粧直し」程度に見られている。それゆえ、日本の市場参加者より強く「いずれ日銀追加緩和」を見込む向きが多い。


ウクライナ情勢も市場の材料としては陳腐化して、「有事の円買い」リスクは当面低い。
そこまで先読みしたうえで、ヘッジファンドはFOMCまでの「急ぎばたらき」と割り切って、ドル買い・円売りポジションを増加させつつある。彼らの常套手段ともいえる「噂で(円を)売って、(FOMC当日の)ニュースで買い戻す」目論みである。
短期の値幅狙いゆえ、106円50銭を超えれば、円を買い手じまう可能性が強い。
ドルインデックスも2011年以来のドル高局面では、84の大台で頭打ちになっている。


中期的には、利上げ開始時期が来年としても、それまで、まだ1年近くは緩和状態が続くので、ドルが再び売られ円高に傾く局面もあろう。まだ106円台定着までには時間がかかる。あくまで逃げ足の速いホットマネーによる円売り加速と見極めるべきだろう。


金価格は1250ドル台まで急落。
円安で円建てには著変なしだけれど、私のアドレナリンはかなり出てきました。1200ドルになっても、そのときは為替が108円くらいの円安だろうし、結局、円建ては底値圏だね。円安の時代の金買いは、あまり深追いしてもしょうがない。8割がたで良しとせねば。
と言うようなことを、今朝の日経でコメントしてます。昨年の時点で日経マネー座談会などで「2014年の金相場は1-3月期が高値」と発言しているので、(珍しく 笑)今年は当たっているかな。


ただ、昨年の時点でウクライナ・イラク危機までは読めなかったので、その分、ここまで予想より高めに推移してきた。私が想定していたレンジより地政学的要因で50ドルは上振れしたかな。その地政学プレミアムも徐々に剥落しつつある状況。


長期の流れでは、米国の利上げ時期が明確になったときに、「利上げ」要因も相場に織り込まれ、あとは中国・インドの安値買い待ちになると思う。中国だって安くなれば必ず買い出動するよ。通年では前年比2割程度減りそうだけど。インドもこれからがディワリ祭礼シーズンの本番。振り返れば、昨年ディワリの真っ最中にインド訪問して、早くも一年近くになるな。。。なんせ、盆と正月が一緒に来て、しかも、なにかショッピングすることが「縁起良い」とされるのだから、お店にとってはかきいれ時。インドの金輸入規制も結局密輸を増やすだけ。対岸のドバイがインドへの金流通中継基地になって、漁夫の利を得る。


9月のFOMCは今年もNYからコメントします。
と、書いているうちにNYからの速報で
錦織ストレート負け。アチャー~~


NYではヤンキーズの田中登板も見たかったけど、それもダメそう。黒田でも見てくるか(なんていうと黒田投手に失礼だよね。40歳

近くで、故障者リストに入らず全シーズン投げ抜く彼の姿は、おじさんたちに勇気を与えてくれます!)


ちなみに、相場も怪我しやすいけど、そうなったら、みずから「故障者リスト入り」する勇気が大切です。
これは真面目な話。

2014年