豊島逸夫の手帖

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ソロス氏スペイン買いはドラギ総裁の心の支え?

2014年3月7日


6日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、市場の期待に反し、政策金利が0.25%に据え置かれ、ユーロが買われ、円売りを誘った。米国の対ロ制裁発動により再び地政学的リスクが高まったにもかかわらず、円安に振れている。
理事会後の記者会見でもドラギ総裁は、珍しく「穏やかな景気回復確認」と楽観的見通しを述べた。
ウクライナ危機の欧州経済への余波も懸念されるが、グローバルな視点で見れば、マネーは欧州に向かっている。本欄でも割高感のある米国株から日本株・欧州株へヘッジファンドのマネーが流れると書いてきたが、日本株買いが一服したところで、欧州株が浮上している。
所詮、資産分散運用は「相対評価」の世界だ。米国、欧州、日本、どの経済も構造不安要因をかかえるが、比較的に「マシ」と思われる地域をマネーは選択する。
その代表例が著名ヘッジファンドのスペイン買いだ。
直近では、ヘッジファンドの2013年収益ランク一位のソロス・ファンド・マネジメントと第四位のポールソン&カンパニーが、ともにスペインのリート IPO(ヒスパニア・アクティボス・イモビリアリオス)に9千2百万ユーロづつ出資と報道された。その報道に対し、ポールソン氏は「スペイン不動産市場の 投資機会を捉える。このリートの運用会社も良い。」と語っている。欧州不動産市場では、既に英国やアイルランドが割高になっているので、南欧が選好されて いるようだ。


株式市場でも著名投資家のスペイン株買いが目立つ。
口火を切ったのは、ビル・ゲイツ氏で、スペイン建設大手FCC株式の6%を昨年10月に購入した。市場ではスペイン経済回復への楽観論を映す動きと解釈さ れた。たしかに、例えばスペインの経常収支は黒字転換しているが、これは賃金カットなどの身を削る緊縮政策による。地域共通通貨ユーロを導入したことで自 国通貨安による輸出増を狙う為替政策が使えないためだ。とはいえ、新興国株が買いにくい状況では、どの先進国も「問題含み」なれど、割安感のある欧州株が 「相対評価」で買われる。
FCC買いには、続いてソロス氏も参入。同株式の3.1%を取得、と報じられている。
更に、直近では、スペインのバンキア株も取得したようだ。スペイン政府は、同国4位のバンキア株7.5%を放出。その売り出しに応じた95のファンド・投資家の中でソロス氏が6位だったとされる。
ソロス氏やポールソン氏らヘッジファンドの南欧株買いも、ギリシャの経営不安会社株を「叩き売り」同然の価格で購入した事例から、今は、積極的に南欧経済の回復を評価したうえでの投資姿勢に変化している。
「当たりや」著名ヘッジファンドの実践行動は、ドラギECB総裁の楽観論の心の支えになっているのだろうか。
ウクライナ緊迫にもかかわらず、慎重な同総裁にしては珍しい楽観論は、市場の深読みをも誘う。


貴金属市場も面白くなってきたね。
米、対ロ制裁発動で、有事の金が買い直され、プラチナは南ア供給不安で予定通り素直に(笑)上昇。
金は1348ドル、プラチナは1488ドル。値差が、いつのまにか、140ドルまで拡大。連れて(パラジウム生産世界一の、ロシアへの経済制裁でパラジウ ム輸出に支障が出るのではないか、との連想で)パラジウムが780ドル。UBSはパラジウム1000ドル説を唱えているけど、それにはついてゆけない。と はいえ、白系メタル予測では、来週発売のジェフムックの中のプロ3人対談(亀池と)で、私がいつのまにか一番強気予測になっていた。対談したのが2月6 日。「出版までまだ1カ月もあってリスクあるなぁ」なんてブツブツいいながらの、プラチナは「今が底。上は1700ドル!」などと私は口走ってそれが活字 になって残った。
ムック発売は3月12日。出版記念講演&サイン会は丸の内オアゾ丸善本店で購入した人に整理券が配られ、3月26日午後7時から、同店内の日経セミナー ルームで。(1冊目と2冊目と同じ場所。)これまでの例だと、電話で購入予約して当日参加もできるはずだけど、丸善に確認は出来ていません。

2014年