豊島逸夫の手帖

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欧中経済共倒れリスクでNY株急落、金急騰

2014年10月10日

8日公表されたFOMC議事要旨で、欧州経済減速とドル高のリスクが強く意識されていたことが判明。同日の欧州ではドイツの8月輸出統計が5.8%急落。金融危機(2009年1月)以来、最大の下げだ。ドイツが4-6月期に続き2四半期連続でマイナス成長を記録し、「リセッション入り」する可能性さえ視野に入る。その翌日(9日)ワシントン訪問中のドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は、「欧州低インフレリスクに対して、非伝統的政策手段で、ECBのバランスシートを(債券買い入れで)必要な限り変える用意がある。やり過ぎるリスクより、やり足りないリスクのほうが大きい。」と述べた。市場では、いよいよ国債購入型の本格量的緩和を示唆か、と受け止めているが、ドイツ連銀が依然導入反対の姿勢を変えていない。この欧州懸念が9日の米国株急落の引き金を引いた。前日公開されたFOMC議事録は、「ハト派色強まる」とされ、株式市場は熱烈歓迎の買いで答えた。しかし、翌9日には、利上げ先送り観測の要因とされた欧州経済減速の米国への「伝染の可能性」が売り材料とされたのだ。

その欧州輸出回復のためには、ECBの実質ユーロ安政策にくわえ、中国との貿易拡大が欠かせない。中国はドイツにとって、輸出額が670億ユーロ(2013年)に達する上顧客だからだ。同時に中国から734億ユーロも輸入するので、中国にとっても優良得意先である。

そこで、ウオール街が株価急落に揺れた日、ドイツのメルケル首相は、ベルリンで中国李首相率いる数百人規模の訪問団と両国経済交流強化に関して会談していた。
いまや、欧州経済を支えるメルケル氏とドラギ氏の二人。かたや「できることは何でもやる」姿勢を見せ、積極財政・構造改革のポリシーミックスを訴える。かたや、中国への依存度を高める。(ウクライナ問題に関して、調停役を中国に期待する本音も透ける。)

しかし、中国経済も、IMFは2015年経済成長率予測を7.4%に据え置いたが、数々の構造問題をかかえる。例えば、理財商品を組成したシャドーバンキング問題も、too big to fail(大きすぎて容易につぶせない)状況だ。最終的には、理財商品を中国版ハイイールド債として売買できる市場の環境整備強化が必要となろう。
しかも、欧中経済関係は、ドイツ自動車メーカーへの独占禁止規制対象リスク、技術移転リスク、そして人権問題リスクをかかえる。
欧中共倒れリスク回避のために、既に両国首脳は今年に入り3回も訪問外交を繰り返している。それでも、いざとなれば、経済合理性を無視しても、習近平主席の掲げる原則は頑として譲らないのが中国でもある。

なお、中国は今や米国と世界最大の原油輸入国の座を競う。その原油価格は、WTI先物価格が3ドル急落して84ドル台。欧州のブレント原油価格までも90ドルの大台を割り込み、89ドル台に沈んだ。ここにも、欧中経済減速の影響が及んでいる。
原油価格下落は、車社会の米国にとってマクロ的には減税に似た効果をもたらすが、株式市場ではエネルギー関連株が売られる。

NY株急落は、単なるバリュエーションやチャートの域を超え、世界経済の不安定要因を映す鏡となりつつある。
そして、リスクオフの地合いの中で、相対的安全資産とされる米国債と金にマネーが逃避。一時1180ドル台まで下げた金価格は乱高下しつつ1220ドル台まで反騰。ドル安傾向も金買いを誘った。ドルとの逆相関が強まっている。プラチナ・パラジウムは市場の流動性が小さいので反騰の度合いも強い。けれど、先物市場での空売りの買戻しが一巡すると、それ以上は当面上がらないでしょう。とにかくバーゲンハンティングだね。

さて、今日の写真は関西出張中に会食した、京都の最古商人宿ともいえる金又(錦市場近く)。
まるで時代劇で商人たちが談合する場に使われそうな昔ながらの部屋が保存され、個室となっている。(今でも宿泊もできるらしい。)

1979a.jpg食事で印象的だったのは、子持ち鮎のから揚げ。写真で分かるとおもうけど、骨が見事に身から抜かれ唐揚げにされて、アユ煎餅みたいな感じ。

1979b.jpg1979c.jpgどうやって、あれだけ、骨が抜き取れるのか。相当、手間かかる仕事だね。甘ものは、栗きんとんが出た。これは、厳しいスイーツ評論家(笑)としては、岐阜の本場に軍配あげるかな~~。

1979d.jpgとにかく、江戸時代にタイムスリップしたかのようなひと時でした。値段も、らく山の倍でした~。

2014年