豊島逸夫の手帖

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誤操作が増幅した円高

2014年8月7日


市場のコンセンサスが円安方向に向いたところで、円が急騰している。多くの市場関係者の予測が同一方向に傾くと価格は逆に動くことは、よく見られる現象だ。このようなとき、専門家の見方はリバース・インディケーター(和訳すれば、反面教師とでもなろうか)といわれる。


しかも、6日のニューヨーク市場では、明らかに「誤操作」(英語でファット・フィンガーとよばれる)とみられる円急騰劇もおこっている。一時、瞬間的に102円30銭台から101円80銭台まで円がロケットの如く上昇している。しかし、その次の瞬間には102円10銭台まで円は急落している。一日のドル円チャートを見ても、その瞬間だけ、(ドルからみると)V字型の落とし穴のような形状が目立つ。
この誤操作は、市場に連鎖的円買いを誘引した。円安予測に基づく円売りポジションが増えていただけに、思わぬ円高の進行により、ストップロス(損切り)注文自動発動による円買い戻しが連鎖的に起こったのだ。
高頻度取引が市場を支配しがちなマーケット環境では、株でも外為でも商品でも、ファット・フィンガーによる瞬間的乱高下は時折見られる現象ではある。特に、夏季休暇期間中で、取引が薄いので値だけ飛ばしがちな地合いだ。


さて、中期的に見れば、今週に入り一時は103円台をつけたほどの円安傾向が、一転大きく円高に振れた最大の理由はウクライナ情勢だ。プーチン大統領の報復措置、そしてロシア軍ウクライナ侵攻の兆しなどが嫌気され、市場全体のリスクオフが顕著だ、その結果、マネーが相対的に安全とされる米国債・金そして円に逃避している。米国債利回りも一時は2.6%台にまで反騰していたが、
6日には2.43%まで下げ、2.47%で引けている。
金も約2%急騰して、1300ドルの大台を再度突破した。

どの市場も、FRB利上げ観測と地政学的要因の綱引き状態が続いている。6日は明らかに後者が優った。


しかし、米国地区連銀総裁の発言などで米ドル利上げ観測が再び市場の主たる材料とされれば、日米金利差拡大で円安傾向に戻るだろう。
但し、その場合でも長期化必至のウクライナ情勢が円安の抑制要因としてジワリ効くことになりそうだ。
地政学的要因による円買いは弱まったとの観測も出ていたが、やはり、リスクオフの円買いは無視できない。ドル円が200日移動平均線から大きく乖離する状況にはなりにくい。


なお、マクロでみれば外為市場はドル高である。特に、欧米市場で最も取引量の多いドル・ユーロの通貨ペアに関しては、ユーロ安傾向が顕著だ。4-6月期のイタリア経済成長率がマイナス0.2%に沈み、2011年以来のマイナス成長傾向が止まらない。6月のドイツの製造業受注が前月比3.2%減少したことも欧州経済不安材料とされユーロ売りを誘った。マイナス金利導入などのECB追加緩和措置発表後も、ユーロは対ドルで1.36台から1.33台までジワリ下げている。
主要三通貨の弱さ比べ状況が続き、現時点では、円>ドル>ユーロと、円が最強通貨に浮上している。

亀井幸一郎と裏磐梯のボナリ高原GCにて。


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日経土曜プラスワンのランキングで東日本一位になったところ。背景は磐梯山。標高1000メートル。
それでも日中は33℃になっていた。ただ、爽やかで高原の風が心地よい。宿泊は近くの沼尻温泉の旅館で宴会。

2014年