豊島逸夫の手帖

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GFMS社 ゴールドサーベイ2008発表

2008年4月10日

900-925ドルのレンジで数日揉みあっていた相場が、昨晩上放たれた様相。20ドルほど急騰して935ドルをつけている。背景は、もちろん、原油110ドル台突破、そしてドル安。IMF金売却構想などは、吹っ飛んだ感じ。

昨晩の欧米金市場の話題は、なんといっても、GFMS社の金年報ゴールドサーベイ2008の発表。注目の価格予想は、当面800ドル台後半の水準で底打ち。その後1100ドル、あるいは、1200ドルまたはそれ以上に急騰。今年、まず、ひと山あり、来年2009年に"大きな山"があるかも。しかし、その後は、marked price weakness=価格は軟調に転じる。宝飾などの実需が高値で急減し、供給は増えるので需給バランスが緩むという見立てだ。

なお、2007年の年間需給統計の確定数字を以下にまとめておく。

項目

2006年

2007年

供給

鉱山生産

2,486

2,476

公的売却

370

481

中古金スクラップ

1,126

956

供給総計

3,982

3,912

需要

宝飾需要

2,284

2,401

工業用需要

648

671

アジア中東の退蔵需要

235

236

欧米の投資需要

404

158

ヘッジ買戻し

410

446

需要総計

3,982

3,912

年平均価格($/oz)

603

695


以下、コメント。
―新産金は微減。なお、注目の産金国トップは、やはり中国で280.5トン。南アは269.9トンで、ついに2位に陥落したことが改めて確認された。その差が速報値では2トンの僅差だったので、確定値では開いたカタチだ。
―公的部門は増えたが、ワシントン協定の範囲内でサプライズ無し。
―スクラップ環流は減少したものの、今年は増えよう。
―宝飾需要は2007年前半急増したが、後半に失速。通年ではプラス。今年は急減しそう。
―欧米の投資需要が意外に少ないのは、2007年央にかなり利益確定の売りが出たため。ただし、10-12月期には急増している。
―鉱山会社のヘッジ売りが高水準。ただし、今年は減少の見込み。

今年2月のWGCセミナーでGFMS社CEOポールウオーカーが講演、パネルで話したこととほぼ同じ内容であった。

昨晩の外電は、GFMS、1100ドル、1200ドル予測と書きたてているから、昨日の急騰には一役買ったようだ。本欄流に言えば、今後2年間は新雪がさらに積り、2年後に大雪崩が起きるということか。とはいえ、Predicting the top is a thankless task=相場を予想するなど詮無いこと、と、しっかり予防線も張っているよ。気持ちは、よーく分かる...。

2008年