豊島逸夫の手帖

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オイルマネーとチャイナマネーの接近

2008年4月9日

今月は、アブダビ、カタール、サウジアラビアの首脳が続々北京訪問の予定。UAEはすでに訪問済。オイルマネーがサブプライムに汚染された米国市場中心の投資を分散化する動きと読める。ドル安、加速する人民元高が直接的なキッカケであろう。中国もオイルマネー大歓迎の姿勢。胡錦濤主席が各首脳とにこやかにプレス用写真に納まっている。その背景には、中国のあくなき資源獲得戦略が見え隠れする。

さらに、ADIA、KIAなどアブダビ、クウェートの政府系ファンドとCIC(中国の政府系ファンド)の交流も目立つ。この二つのビッグマネーが連携するとなると、米国にとってもかなりの脅威となろう。すでに、ADIAはシティーバンクに、KIAはメリルリンチに巨額の資本参加を実行していることは周知の事実。米国政府としても、サブプライム禍の中で、公的資金投入の役割を中東系SWFが担ってくれる構図で当座を凌ぐつもりなのだが、中東サイドの本音が単に経済的動機だけなのか、政治的意図はないのか、気になるところではある。そこにチャイナマネーも絡むとなると、これは黙ってはおられまい。

それにしても中国のしたたかなことよ。同主席はアフリカにも頻繁に出向き資源外交を展開するし、本欄2008年2月5日付"米中連合軍 暁の急襲"に述べたように、中国アルミが米国アルコアと組んで、資源メジャーリオティントとの株式買収に乗り出す。

昨日の報道では、折も折、今度は中国がBHPビリトンの株式取得に動き出し、中豪関係が緊張化しつつあるという。中国サイドとしては、なんとしてもBHPビリトンとリオティントとの合併による巨大資源メジャー独占体制だけは避けたいのだね。強い執念を感じる。

さらに、昨晩のテレビ東京 ワールドビジネスサテライトを見ていたら、希少資源レアーアース(希土類元素)の90%が遍在する中国には、レアーアース専門の研究所が三日に一回の頻度で研究論文を発表しているとのこと。我が日本の東工大がベトナムの中国国境近くから採取したサンプルを元に画期的研究成果を発表すると、すかさずそれを元に豊富な自国サンプルを使い様々な研究成果を上げているという。

これらの一連の中国政府の資源戦略をみるにつけ、日本国内のガソリン財源議論が、なんとも"コップの中の嵐"に見えてしまう。ロンドンの同僚に言われてしまった。"日本丸が沈没しつつあるのに、その船内で日本人乗客たちは、 船長の責任だ。説明責任を果たせと騒いでいる。"国を当てに出来ないのだから、個人レベルで手頃な稀少資源(金、プラチナ)の備蓄でも考えたほうがいいんじゃない?

さて、足元の金市場では IMF金403トン売却が理事会で合意され投票にかけられるという。全体の85%の合意が必要で、米国が17%の実質的拒否権握っている構造は変わらず。マーケットでは"狼少年"扱い。仮に実行されてもワシントン協定の範囲中だからサプライズは無し。

今晩はGFMS社Gold Survey2008発表。需給統計は最終修正あるも、すでに四季報で公表済。マーケットの関心はGFMS社の相場予測。先日のWGCセミナーで講演したGFMS社CEOポールウオーカー氏の発言でおよそ内容の見当はつくでしょう。

なお、早朝の米国CNBCクロベル(クロージングベル)見ていたら、金価格高騰で、米国消費者金融Cash Americaという会社が、ゴールドジュエリーを担保に融資するシステムが大当たりで、個人向け融資全体の65%に達するという。金利は年率換算で20%。それでも他のシステムの35-40%の半分と強気の発言だった。曰く、サブプライム禍の中の貸し渋りで、債券担保でもカネを借りられず、究極の担保がゴールドだとか。これも"有事の金"の変形か。

加えて、NYでも、金製品の買い取りが流行り始めているそうだ。ここまで来ると、リサイクルという二次的供給源が相場上昇にブレーキをかけることが現実味を帯びてきたと感じる。

2008年