豊島逸夫の手帖

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釘刺し役のジェフ

2008年10月8日

今朝は、"御用繁多でよんどころなく"、まだNY株式市場も引けない前に書いている。いま、NYの仲間と電話で仕事していたら、"ゴールドマンサックスの株価が115ドルを割った"と騒いでいる。例のバフェット氏の出資について、50億ドル優先株引き受けに加えて、さらに50億ドルの普通株を115ドルで今後5年間は買える権利(コールオプション)取得というワラントがオマケでついていたからだ。そこに同社株価が本稿執筆時点で112ドルまで下がってきたから、このコールオプションはout of the moneyになってしまった。つまり、バフェット氏にとってはオマケの価値が無くなってしまったのだ。まぁ、この程度で動揺して手を引くようなバフェット氏とは思えないが、マーケットの雀たちはピーチク、パーチク。

似たような噂が、モルガンスタンレーにも。三菱UFJが手を引くという噂で一時35%も株価が急落した。短時間での下げ幅としてはハンパではない。中東中国の政府系ファンドが米国大手金融機関に資本投入始めた途端に株価が下がり、大けがして国内で非難され、その後すっかりおとなしくなった例もあるから、マーケットの雀が騒ぐのだろう。おカネもちで遊びの経験もない若旦那が賭場に出入り始めて、いきなりむしられるようなものだ。 

それから、国内では不気味な感じのニュースが、グロソブ基準価格7000円割れ。ピクテのグローバルインカムも運用開始以来、初めて8000円割れ。このようなリスクについては、だいぶ前に本欄で具体名は出さずに触れたことがあるが、その時の読者の異常な反応に書いたほうがビックリした覚えがある。その当時は、どうもタブーに触れてしまった感じだった。その時も書いたのだけれど、筆者が心配するのは購入者の金融リテラシーの低さ。つい先日もFP相談例として、老後の定期収入の欄に、年金xxx円、グロソブ配当xxx円と、年金同様に確定収入として見込んでいるのを目撃して唖然としたものだ。

さて、先を急ぐので今日はこれでおしまい。なお、今日のテレビ東京、午後3:35分から生出演します。(日経CNBCでの再放送は夜8:35から)。ディレクタ―氏のつけたタイトルが"株下落の今こそ有事の金?"。有事の金に慌てて飛びつくな。安全資産と言われるが、信用リスクゼロという意味では安全だが価格変動リスクはあるよ、という自説を述べます。

今週発売の週刊現代でも"大恐慌、これから金投資"という記事で、最後に"下がることもあるよ"と登場して、最近の筆者の役割は"リスクを指摘する釘刺し役"になりました(笑)。明日発売のフライデーにも4ページの金特集が組まれるはず。記者さんには相当クギ刺しておいたけど、果たしてどう書かれるかな...。

2008年