豊島逸夫の手帖

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サブプライム非汚染地域に逃避するマネー

2008年1月17日

サブプライムに端を発する世界同時株安、ドル安で動揺するマネーが、米国債、金に流入中。10年物米国債の利回りは3.7%にまで低下。台所は火の車の"Uncle Sam"(米国政府)に10年間、金利3.7%でお金を貸すかね。結局のところ、米国に今後10年間インフレリスクが薄いと見る人は米国債に逃げ込むし、インフレありと見る人は、金に逃げ込む。NYシカゴの原油、穀物高を見れば後者。昨晩発表のベージュブック(米国地区連銀報告)、0.2%増に落ちついたCPI、米経済リセッション懸念を見れば前者。相反する潮流の中で一番悩むのがバーナンキさん。

各市場を点検してみよう。

NY株:昨晩は米議会で高まる財政出動期待、原油反落、JPモルガンの追加損失30-40億ドルで予想を下回ったことなどで、相変わらずのジェットコースター相場なれど、とりあえず若干持ち直し。とはいえ、ショートカバー ラリー(先物売りの買い戻し)の域を出ず。まだメリル決算発表が残っている。150億ドル程度の追加損失予測。

外為:ECBメルシュ委員の外電インタビューでの一言が効いてドル反騰。"downside risks to economic activity"(欧州経済も下振れリスクあり)とのコメントが、ECBもFRBにならって利下げかとの観測を生んだのだ。ユーロは1.48から1時間で1.46へ急落。円も107円台へ円安。クロスレートのユーロ円も157円台へ。それを受けて、金も1時間で直ちに895ドルから875ドルまで20ドル急落。

というわけで、この24時間で、金市場も20ドル幅の乱高下。気になるのは、金ETF残高が796トンから一気に773トンへ急減していること。900ドル近辺では、さすがに利益確定売りが大量に入ったことを示している。これで調整入りムード強まる。しかし、底は浅いだろう。

ゴールドマンサックスは、本欄2007年11月30日付け"ゴールドマンサックス 2008年金売り推奨"に書いたとおり弱気だったが、ここにきて、金価格予測を大幅上方修正。
2008年 800ドル→915ドル!
2009年 852ドル→870ドル
2010年 907ドル→940ドル
これは年平均価格予測だから、短期的にはオーバーシュートもアンダーシュートもあるけど長期的に高止まりということだね。

さらに、よくメディアに登場するBullion Deskのロス ノーマン氏は今年のレンジ840-1250ドル。平均価格976ドルと強気。

冒頭にサブプライム非汚染セクターとしての金にマネー逃避と書いたが、それではサブプライムが一巡すれば金から逃げ出すかといえば、逃げ出すマネー(ヘッジファンドなどの投機マネー)と居座るマネー(年金、中国、インドなどの長期保有の買い手)に分かれる。前者の指標=NY金先物買い残高が減って、後者の指標=金ETFの残高は長期的には徐々に増えるという現象となるかも。

足元で進行中の調整売りは、長期上昇トレンドの中では、健全な相場現象と言える。とりあえず利益確定したい人は売り、そこで下がったところで待ち構えていた人が新規買いに入る。利食いした人が、下がったところで再参入もよく見られる現象。いずれにせよ、ここからは、これまで買いそびれていた人の出番になろう。30日のFOMCで本当に75bp(0.75%)の利下げをやったら、金利を生まない金には大変な追い風になり、反騰のきっかけになるだろうね。

さて、WGCセミナーの応募数がとうとう1000人を超えました。これは、有名人評論家抜きのセミナーとしては記録的な数字です。大阪会場には、香川の農業、輪島の漁業、広島の医師、岡山の商店経営などの方々から、"毎日読んでいます"という書き込みがあり、筆者には励みになります。

なお、来週はTVスタジオ解説2件あり。21日日経CNBC夕方5時(再放送8時)、テーマは"金 上がるシナリオ 下がるシナリオ"。それから25日 TV東京ニュースマーケットイレブン。いずれも生放送です。筆者はやっぱりスタジオに呼んでいただいてナマで話すほうが好き。先週土曜日のTV東京 WBS(ワールドビジネスサテライト)に出たときは、事務所でのビデオ収録で、20分ほどカメラの前で喋りましたが、放映されたのは数十秒でした。なお、同番組の塩田真弓キャスターが今週シカゴに出張取材し、商品取引所のフロアーから、近郊のトウモロコシ農家にまで果敢に乗り込んだようです。明後日(土曜)の夜のWBSで早速見れるらしいよ。これは視聴おススメ。

2008年