豊島逸夫の手帖

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"バブルなくしてイノベ―ションなし"

2008年5月29日

今日のタイトル、これは、グリーンスパン氏の言葉である。2001年のハイテクバブルは、インターネット情報革命競争の行き過ぎの結果であった。今回のサブプライムは、投資対象があれば何でも、それを証券化して商品化するという金融技術の革新が行き過ぎた結果であった。インターネットにしても金融技術の革新にしても、最初から行き過ぎのバブルを恐れていては、起こり得なかったであろう。

"食品、エネルギー、ゴールドにバブルはあるのか?あるとすれば、我々はいかに対処すべきなのか"と彼は問う。それに対する彼の答えは、今や"グリーンスパン ドクトリン"とまで命名されるほど有名になった。"バブルの原因は、マーケットの何らかの欠陥ではなく、人間の恐怖心と欲望である。"この議論に立つと、バブル防止のために色々策を巡らすのは無駄な努力。欲望と恐怖心に取りつかれたマーケット参加者に、やるだけやらせて後の始末を当局が行えばよい、ということになる。

たしかに、当局がバブルを未然に防ぐ方法はある。それは強烈な金融の引き締めなどで経済を圧迫することだ。しかし、それは当然大きなコスト(経済へのマイナスの影響)を伴う。これは日銀の締め過ぎでバブルの強烈な破たんを経験した日本を想定しての発言だろう。

そもそも、今回の住宅バブル崩壊の過程を見ても、景気循環サイクルの山のときに過剰融資が蔓延し、谷に近づくと貸し渋りに転じた。このパターンが毎回繰り返される。そこで、銀行の自己資本比率などの規制は、景気循環サイクルの山の時にこそ強化し、谷では緩和するべきではないか、というのが彼の持論である。

バブルが醸成されるためには三つの条件が必要。
―低い長期金利
―低いインフレ率
―安定したマクロ経済
このような環境の中でこそ、過剰流動性は生じ、投資家のリスク意識は希薄になり、将来に対する楽観論がマーケットを支配して、ついついやり過ぎてしまうのだ。

現在のマーケットは、上記の三条件を満たさない。長期金利も低水準だが、じり高傾向にある。まぁ、サブプライムに懲りて 今後10年間にバブルが生じる確率は低いというのが彼の見立てだ。金融危機は10年ごとに繰り返されてきた。喉元過ぎれば熱さ忘れるのが人間心理なのかな。

2008年