2008年2月5日
資源ウオーズが新展開を見せている。今回の台風の目は、やはり中国。同国鉱山大手の中国アルミ(Chinalco)が米国籍のAlcoa(アルコア)と組んで、リオティントの英上場株式12%を取得したのだ。
まず、背景から説明しよう。世界の鉱山業界はBHPビリトン(豪)、リオティント(ロスチャイルド系の多国籍企業)、そしてアングロアメリカン(南ア)の3社によって牛耳られている。そのうえ、BHPはリオに買収工作中。これが実現すれば、鉄鉱石などはBHPにより完全に独占状態になってしまう。そこに危機感を抱いたのが中国。国内インフラ整備に欠かせない鉄の供給を豪に頼る中国としては、ゆゆしき事態である。
そこで、BHPのリオ買収工作を阻止するために動いた。それもかなり高度の金融テクニックを駆使しての戦略である。まず、米国籍の大手アルコアを抱き込み、米中連合軍でリオ株の取得を始めたのだ。中国単独では警戒もされるし政治的摩擦も生みかねないからだ。買収資金供給には中国開発銀行のコミットメントを取り付けた。実質的に中国政府の合意の上での計画となったのだ。その上で、レーマンに、"暁の来襲"計画を依頼した。1月31日午後4:30.(豪時間深夜2:30)。英上場株式12%(1兆5千億円相当)の隠密リオ株取得開始。レーマンのロンドン本社は静かな緊張に包まれた。とにかく外部への情報漏れは命取りになる。舞台裏でリオ大株主を一本釣りで口説く工作が始まった。時間との戦いでもある。
午後9:30。レーマンにとって"決断の時"が来た。12%には、まだ足りない。比率を変えるには今が最後のチャンス。しかし、多くのリオ既存株主に12%という数字を提示してリオ株売却の合意を取り付けた手前、おいそれと変更するわけにも行かない。最後の決断の決め手となったのは、レーマンに近いヘッジファンドたちの同意であった。午後10:00、無事、作戦終了。
まさに欧米大手投資銀行のノウハウを駆使しての中国企業の世界進出。彼らの戦略も実に高度になってきた。
今後の注目は、BHPの対応。豪州時間2月1日金曜日、同社幹部が週末休暇モードに入りつつある矢先。完全に虚を突かれた。早速、ゴールドマンサックス、シティー、UBSから成る強力なアドバイザーたちを緊急招集。
Chinalcoの提示株価60ポンドはBHP提示の48ポンド相当を大幅に上回る。しかも、英国当局から2月6日までに買収計画の最終決定を迫られている。いずれにせよ、BHPのリオ買収計画に大きな阻害要因が現れたことは間違いない。第一ラウンドは中国にポイント。世界の資源争奪合戦に必至に食い込もうとする中国の姿勢は、ますます顕著になろう。
それにしても、今頃ノコノコ南アに出かけて、えらそうに資源開発の資金供与を持ちかけるどこかの国の経産大臣とはえらい違い。別にジャパンマネーなんか要らないよ(数年前からオイル、中国マネーは動き始めていたのだから)、"なにしに来たの"とは、筆者の南アの友人のコメントであった。ヒジョーにサビシイね。
さて、足元の金価格。昨晩は、NY時間で一時890ドルそこそこまで売り込まれたが、その後 反騰。900ドル台を回復。完全な調整モードである。
さて、昨日は日経CNBC金特番の収録を行いました。明日2月6日オンエア。再放送2月9、10日。
まぁ、内容は初心者向けで本欄の読者に目新しい話題はありませんが。全部で6つのコーナーから構成される30分番組ゆえ、3-5分で1テーマをまとめて話すというのもなかなか大変な作業なのですよ。フロアーディレクターの"あとXX秒"との戦いでした。あとでモニター画面見たら、眼が赤くて睡眠不足ミエミエ。テレビ出演に呼ばれる時は、相場大荒れでクタクタの状況というパターンは毎度のことではありますが...。