2008年11月7日
米国大手金融機関に公的資金が投入されるに至り、そこで働く幹部の今年のボーナスが問題視されている。トップクラスでは40-50億円とか、幹部でも数億円はフツーである。そこに兆円規模の税金が投入されるのだから、納税者は黙っていない。当然、ウオール街でも自主的にボーナス30-50%カットの動きが出てきた。それでも億円から数10億円の桁は変わらない。
また、行内の部門ごとにボーナスカットの差が鮮明になっている。まず、"戦犯"扱いのmortgage(住宅ローン関連)、structure(仕組み債関連)部署は、ゼロに近いボーナス。株式部門は株価悪化で当然カットだが、将来的に"根絶やし"には出来ない基幹部門なので、従業員のモチベーション維持の為に、それなりに個別のパフォーマンスに応じて支払われる見込み。そしてカットの嵐の中で例外的に"お構いなし"で最小限の減少幅に抑えられるのがコモディティー(商品)部門だという。上がって下がって取引量が増加したので手数料収入は増えたということか。同じ商品部門でも、自己勘定の売買部門は行内リスク管理が強化された煽りで縮小傾向にある。これが市場流動性の減少を招き、薄商いの中で値が大きく振れる要因となっているのだが。
さて、ウオール街より、目先の懸念はデトロイトである。自動車のビッグスリートップが今日、2兆円のつなぎ融資を求めてワシントンに陳情するらしい。うちらも救済してくれへんと、どないもなりまへん、ということである。9月9日付け本欄"救済される業界と救済されない業界"に書いた事情が加速している。銀行の救済は、血栓で詰まった冠状動脈の流れを良くする処置であったが、米国自動車業界の救済は、国際競争力が弱まり壊死寸前の細胞に対する治療なので構造改革に逆らう動きとなる。かといって壊死させれば全体で250万人の雇用が危うくなる話なので、政治的に放置は出来ないよね。この自動車業界に関してはcollapse(破たん)とかbankruptcy (破産)などという物騒な言葉が堂々とメディアに流れる。この問題が次の台風の目になりそう。
さて、昨晩の話題は欧州の利下げであったが、金市場ではこの材料がユーロ安―ドル高―金売りとなって示現した。ただし、世界的超低金利という傾向は実質マイナス金利傾向の加速ということで、金利を生まない金にとっては中長期的な追い風にあることにも留意すべきであろう。外為市場の"対ユーロドル高、対円ドル安"というねじれ現象とか、ヘッジファンドの決算売りが一巡すれば、この中長期的要因がジワッと効くと思う。