豊島逸夫の手帖

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2009年金価格見通しのポイント パート2

2008年12月24日

前回は米国債券バブルの"ヤバさ"について詳述したが、今回は、その他のマクロ要因を吟味してみる。これは金以外のマーケットにも共通する話である。

一言で言って、2009年はサブプライム金融危機の合併症、後遺症によりマーケットが乱高下する年になりそうだ。金の場合は、2008年に1000ドルまで上がったが、2009年は ここ2年ほどの急激な上昇に対する調整の年となろう。

2009年のマクロ要因を図式化すると こうなろうか。矢印は金価格への影響の方向性を示す。

金融危機の影響
― 実体経済に波及し、世界的デフレ傾向強まる。↓
― 新興国の経済も減速(リカプリング現象)。↓
― 公的救済、大型財政出動を賄うために巨額の米国発行、それをFRBが引き受け
  買い取るというデフレ"対策"として究極のインフレ"政策"実行。↑
― 信用収縮緩和、景気浮揚のため米国ゼロ金利政策。↑
― ただし、米国債大量発行は長期的にドル金利急反騰の結果を招きかねない。↓
― 解約停止で先送りされてきた大型ヘッジファンドの破たん、ビッグスリー含め
  大型倒産の可能性、信用リスク再び高まる、VIX指数 最高値更新も。↑
― カントリーリスク(国のデフォルト=債務不履行)が意識される。ロシア含めて
新興国、さらに米国債の格下げさえ、あり得る。↑
― 債務不履行を起こしかねない国々救済のためIMF出動、その資金確保のため
IMF金売却。↓
― 以上、諸々含め、外為市場ではドルが売られやすい環境なれど、EU圏経済の
  痛み具合が米国より悪くなればユーロ安、ドル高の再現となる。つまり、外為
市場では one-way(一本調子の)ドル安、ドル高が出にくい。レンジ内で短期
的には大きく振れがちな一年となろう。↓↑

いやはや、こうして見ると、マーケットには強烈な追い風と向い風が同時に舞う状況となるは必至だね。ゆえに、金価格も一本調子で上げ、下げとはなりにくい。ドル同様、レンジ内で短期的には大きく振れがちな年になりそう。とくに、マーケット内の流動性が枯渇している、つまり、ファンド撤退とかプロの間の売買のリスク与信管理が厳しくなるので、売買量が減少する。ゆえに、値だけ飛ばしやすい環境だ。

次回は、パート3として、金市場の需給関係を吟味したいと思う。

さて、今週金曜日26日から29、30、31日と、日経CNBCで現地中国取材した"GOLD NOW 2008 中国篇"が放映されます。番組紹介は、同局のHP(www.nikkei-cnbc.co.jp)をクリックすると、個人投資家アンケートという大きな囲みが出ますから、そこでまず新春マーケット大展望のお知らせ(これには筆者の盟友、住商金融事業本部長 高井裕之氏も出ます)。その次に待っているとGOLD NOWの告知が出ますから、そこをクリックすると番組内容になります。特に現地取材した辻田ディレクターのブログが面白いですよ。私も現地取材ビデオを見ましたが、ほんと、へぇぇっという場面や強烈なインタビューなどがあり、コメントするのも忘れ、モニター画面に見入ってしまいました。これは絶対お薦めです。年末海外旅行に出る人はビデオ録画すべし!

(今、中国で売れっ子のエコノミスト氏がインタビューで"金は核兵器のようなもの。金融政策に対する抑止力がある"というような過激な発言したので、思わずこちらも、"米国は核も金も自分が持ったら他人には持たせない国だ"と切り返してコメントしちゃいました...。)

それから、新著のほうは、アマゾンのランキングでも、日本経済新聞出版社の括りでは 榊原氏の著書と2位争いのデッドヒートを演じております(笑)。

そういうわけで、おととい緊急10000部増刷決定の連絡がありました。それにしても、ブログ軍団のパワーを見せつけられたエピソードがあります。おとといの本欄で、アマゾンや楽天は在庫切れでセブンイレブン系には在庫あるようだと書いたら、3時間後にはセブンイレブン系本販売の売上一位(一時間ごとの更新)になり"在庫あり"から"配送1-3週間"に変わっていました。

出版社に聞いたら、アマゾンでも、順次供給されているようですよ。

今回は、筆者も書籍販売最前線の勉強をさせてもらいました。いかに多くのひとがネット経由で本を購入しているか。対してリアル書店(こういう業界用語があるのですよ)は、その店の売り方次第で売れ筋がかなり違うこと、それは取次会社とか出版社との関係にも影響されるということ、などなど。なにげなく通っていた本屋さんですが、私の見る目がちょっと違ってきました。

2008年